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或る皇国将校の回想録
第二部まつりごとの季節
第三十七話 庭園は最後の刹那まで(下)
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家と駒城の方に先触れを頼んでおいた。ちゃんと軍の訓練を受けた北領の英雄だと伝えてくれるからこれで安心だ」
そう言って菓子を子供達に渡しながら自身も頬張る。
 それを見計らったかの様に段々と喧騒が弱まり始めた。不思議そうにきょろきょろとし始めた子供達に新城が話しかける。
「少し待っていてね。すぐに猫が来るから、大きいけれど怖くないからね」
 少し緊張しているが安心したようだ、よかった。
「剣牙虎は事実、陸軍の式典では兵馬と共に並べるほど賢い獣です。
馬よりも度胸と自制心がありますから相方(パートナー)の少佐が居れば絶対に安全です。
ま、大きくて賢い猟犬とでも思っていて下さい。」
 大人達には豊久が前例を出して簡単な説明をしていると人の波が割れ、瀬川が千早を先導して現れた。ゆったりと落ち着いた調子で新城に近寄っていつもの通りに左手を一舐めして腰を沈めた。新城に親しいものなら日常風景ではあるが、僅かに息を呑んで猫を初めてみた面々が息を呑んで後退りする。
「本当に、大丈夫だよ。――どうです?良い子でしょう、皆さん。彼女達こそが、北領で、我々の事を幾度も救った勇者なのです」
それは子供たちも同様らしくらしく、慣れた様子で落ち着いている父親の後ろに隠れ、らおっかなびっくり眺めているだけである。
「――駒城閣下達の御到来だ」
 そう呟いて寛いでいた陪臣が背筋を正した。新城も笹嶋中佐も背を正す。
駒城篤胤に保胤それに蓮乃、そして初姫――駒城麗子がやって来た。
「笹嶋君、今日は来てくれて嬉しい」
 篤胤が常の悠然とした面持ちで挨拶をした。
「申し訳ないが私達は少々立て込んでいてね。今日のところはこれで失礼させてもらう」
 保胤がそう謝りながら蓮乃と麗子を僕に預け、忙しそうに立ち去っていった。
 だが残された新城も流石に義姉にただ陶然とできる状況ではなかった。新城の個人副官である天霧冴香に馬堂豊久、と蓮乃を不機嫌にさせる二者が揃っている。
 ――参ったな。
 空気が悪くなりはじめ流石の弓月の令嬢も僅かに汗を浮かべている。新城はこうした時に便利な旧友へ視線を送る。だがさすがの汎用クッション型管理職である豊久も自身が敵視されているとなるとそろそろと子供達の方へ転身(とうそう)しようとしていた。
最悪、客人を豊久達に任せるか、と思い定めたところで救いの笑い声が響いた
 ――おやおや。
 麗子が千早に襲いかかったのだ。自分より小さな幼子に対する見栄からか笹嶋家の子供達もそろそろと手を出し子供特有の適応力を早くも発揮している。
「――若いっていいな」
 転進先の船が行ってしまった陸軍中佐が苦笑して言った。
「皆、貴様より度胸があるな。」
 口を歪めながら昔のことを隣の旧友に持ち出すと
「煩ぇやい。出会い頭に顔面舐められたら六つの
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