八 狐疑
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のように信用できない」
先に目を逸らしたのは子どものほうだった。その表情は道化を忘れてしまったかのように無表情で、しかし寂寞とした雰囲気を湛えていた。
横島のほうも子どもに何と言ったら言いかわからず、途方に暮れていた。だって信じてもらえないだろう。
行為は火影と同じ手段だが、過去の記憶を覗き見たなんて。
部屋を再び静寂が支配したが、子どもの嘆息がすぐにその支配権を奪い去った。
「……ッ…ごほ…っ」
「だ、大丈夫か!?まだ寝とけ………っ」
「触るなッッッッ!!」
パシンッ、と。
体を支えようと伸ばした横島の手を払いのける。
理不尽なその行動に横島は怒気を露わにするが、子どもの顔を見ると表情を改めた。叩かれた手を無意識にさする。
(…そんな顔されたら、怒るに怒れないじゃねえか……)
空を閉じ込めた蒼い硝子玉は、今にも雨が降りそうな曇り空へと揺らいでいた。
一方、子どもは無表情を装いながらも戸惑っていた。
痛みには慣れていたはずなのに。殴られ蹴られ抉られることなどしょっちゅうなのに。痛いのは横島のほうなのに。
手を振り払ったことがとても痛く、激しい後悔が子どもの心を占める。
一瞬触れた指先が、酷く熱く感じた。
「…悪い…。でも大丈夫、だから…その…お前もあまり寝てないだろ…このベッド、使え…」
「病人のベッドをとるか!それに元々お前のじゃねーか」
珍しく歯切れの悪い話し方をする子どもを、有無を言わさず横島は横たわらせようとする。
しかし彼の手が触れる前に、子どもはベッドに沈み込んだ。
まだ警戒し避けているその様子に心が痛んだが、それを誤魔化して横島は明るく声をかける。
「なにかしてほしいこととかないか?なんか飯とか作ろうか?」
「……二日前、お前の料理駄目にしたの覚えてないのか…」
「…気にすんなっ!あの時の飯はマジでヤバかったから!すげーマズくって俺も食えなかったから!」
子どもはきつく目を閉じた。それでも意識は横島のほうを向いている。
「…してほしいこと、と言ったな………じゃあ、なぜ俺が道化を被っているとわかった…?なぜ五日前路地裏で会った表の俺と、今の俺を結び付けた?お前は本当にどこまで知っている?なぜ知ることができた?……聞かせろ」
唐突に、緩んだ空気が威圧を増して張り詰める。同時に、深い深い深海色の双眸に横島は射竦められた。
拒否する事を許さない、常人では意識を失うほどの威圧感が彼の背筋を這う。
しかしながら突風の如く襲い掛かるその圧倒的な威圧を、横島は柳に風と受け流した。
「…聞くよりも、見るほうが早いんだけど」
一種の誘導尋問のような子どもの問い掛けに、横島は意味深な言葉で返す。
そのまま横島はどっか
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