七 念い(おもい)
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今まで見た中でも激しい拒絶だった。
けれど横島はその激しさの中にどこか脅えが雑じっているように思えた。この子どもが何の意味もなく拒絶するはずはないと、直感が訴える。
あれだけ虐げられてきた子が、たかだか病院へ行く事に駄々をこねるだろうか。
(里の大人達があんな様子じゃ……医者も同じってことか…)
そういえば火影の記憶には子どもが病気になった描写が一切無かった。おそらく病気になったとしても自分の治癒能力で治るまでヒタ隠しにしていたのであろう。
使用人達の悪行も火影に黙っていたようだし、昨日の暴行も横島が見つけ出さなければ今頃何事も無かったように振舞っていたかもしれない。
(病院につれて行きたいけど……――でも、)
子どもの言い分を考えると、病院みたいな公共の場には行かないほうがいいのかもしれない。
ただでさえ横島は里の部外者であり、見知らぬ人間が子どもと一緒にいれば怪しまれる可能性が高い。普通の子どもならともかく、この子なら猶更だ。
(それでも……――何もしないってのは嫌なんだよっ)
とにかく自分が出来る事をしようと、横島はベッドに子どもを寝かせたままアパートを飛び出した。
火影の記憶を頼りに薬局へ飛び込んでありったけの薬を買い込む。ついでに何か消化に良さそうな食材も。
すぐさまアパートに戻った横島は、ベッドに横たわる子どもの姿を確認し、ほっとした。
もしかしたらまた無理をしているかもと急いで帰ったのだが、その心配は杞憂だったようだ。それでも子どもから眼を放さず、彼はベッドの脇に腰を下ろす。
次いで、横島は再び文珠の生成にかかった。既にストックしていた分は無くなっている。子どもの熱を下げるために、新たに文珠を生成しようと思った。
少しでも子どもの負担を淘汰したかった。
しかし。
「…なんで…ッ…出来ないんだよっ!」
気持ちばかり焦る彼の手には、霊気の霞さえ出なかった。
霊能力を使うのに必需条件は、集中力。しかし霊力が全くない状態の頃の横島は、「煩悩集中――――ッ」とふざけた掛け声で数々の窮地を乗り越えて来た。
これは、自身が最も集中しやすい――欲望を霊能力向上の糧にしているためだと思われる。
そもそも霊能力の源は精神。人間誰しも持つその力を使うのに最も簡単な方法が、感情を入れて引き出すこと。
通常の霊能力者ならばいつでも臨機応変に力を使えるようにしているはずだが、横島の場合大抵が死にそうな状況に突如巻き込まれてしまい、いつも実戦でどうにかしなければならなかった。
この場合、霊能力を高めるために、人間に必ずある煩悩を利用することは正しい反応であるはずだ。…上司である美神令子にはしょっちゅう折檻されていたが。
雇用者として一人の人
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