六 孤影
[3/3]
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
。
あれだけ痛めつけられた子どもの身体の傷が、少なくなっていることに。よく見ると、腫れも子どもを見つけた時に比べてひいている。
(……高い、……治癒能力……)
文字通り、火影老人の記憶を遡り、見た子どもの力。
(便利だと、…思うけど………)
それに見合った子どもの代償は余りに大きい。
自然に癒えるその身体に、それでも横島は文珠を使って怪我を治し、きれいさっぱり消えるとわかっていても包帯を巻いたり消毒するなど、治療の手を休めなかった。
一通り己に出来ることをやり終えた横島は、明け方近くになってようやくベッド脇にて眠りについた。
(不覚だ……………ッ)
窓から溢れた白い光に、うっすらと目を開いた子どもは自身を叱咤する。
如何なる時にも隙を作らず。
いつも生命の危機に恐怖すると、本能が体を動かした。
それが、昨晩得体も知れない監視対象に背負われ、あまつさえその背で寝るだなんて。
(…騙される、かッ……)
真摯な顔の偽善者達に騙されてきた子どもは、その経験から相手の裏を見出そうとする。
だから。
欲望も恨みも憎しみも畏れも欺瞞も打算も同情も、当て嵌まらなかった彼の感情に。
(騙されるもんか………ッ)
……――――子どもは信じない。何も、信じられない。
自身でさえ、信じるといった感情が理解出来ないのだから。
―――――――よって子どもは、己の体の不調にも気づくことが出来なかった。
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ