彼女の名前は
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時間は少しだけ遡る。
草薙護堂が瀕死の重症を負い、病院に運ばれた後。
深夜の道を、人影が歩いていた。
カン・・・カン・・・カン・・・と、ガードレールを落ちていた木の枝で叩きながら歩くその人影は、まるで夢遊病患者のように足取りが怪しい。
「・・・神・・・炎・・・神気・・・神格・・・・・・。私は、私は、この言葉を知っている。」
それは、護堂が命懸けで救った少女。月明かりに照らされ、キラキラと輝く海岸沿いを、フラフラとした足取りで歩いて行く。
「彼女は誰?私は、彼女を知っている筈・・・。思い出せ、思い出せ・・・!」
今、彼女の頭にあるのは、あのまつろわぬ神に言われたことだけ。
『お前の神格を取り戻せ。そうすれば・・・助けられるかもしれんぞ?』
そう、神格を取り戻せ、とあの神は言った。つまり、彼女自信も、神格を所有する神であるということである。
「私が何者かを思い出すの・・・。そうすれば、彼も元気になる。そうなるはずなの・・・!!」
それは、既に願望のレベルであった。ちゃんとした証拠がある訳でもない。ただ、あのまつろわぬ神に言われただけだ。本当に銀髪少女が神だとして、神格を取り戻しただけで護堂が命を取り留めるとは限らないのだから。
だが、彼女はその希望に縋り付いた。見ず知らずの自分を命懸けで救ってくれた護堂を、どうしても救いたかった。それを成す為ならば、どんなことでもしようと思った。それしか考えていなかった彼女は、自分のルーツを探して病院を抜け出した。事件の重要参考人ということで、【赤銅黒十字】の人員により厳重な警備がされていた筈なのだが、何故か誰も、彼女がいなくなったことに気が付かなかった。あの、エリカですら。
「コッチ。この先に、私が求める人がいる・・・。」
唯の勘。そう言ってしまえば御終いだが、恐らく神の一柱であろう彼女が言うのだから洒落にならない。彼女は今、明確な目的地を定めて歩いているのだ。記憶を思い出そうとすると、頭に鋭い痛みが走るので、その歩きは危ういものではなるが。
その時。
ニャー・・・と、小さく猫の声が響いた。
「あ、は・・・♪」
その姿を・・・否、その猫に宿った魔力を視た彼女は、小さく笑う。
「見つけた・・・。」
覚束無い足取りで近づく少女。黒猫は、逃げようともしなかった。だが・・・その代わり、不思議な事が起こったのだ。
『使い魔越しで申し訳ありません神よ・・・。しかし、現在の我が身は、ほぼ全ての呪力を失っておりまして、体を動かすこともままならないのです。今の我が体は、御身の神気に耐え切れません故、使い魔越しの謁見をお許し下さい。・・・御身は、何を求めて私の元へと?』
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