暁 〜小説投稿サイト〜
ハイスクールD×D 〜我は蟲触の担い手なれば〜
『転生。 或いは、交差する赤と紅』
Prologue
[4/4]

[9] 最初 [2]次話
。 しかし、痛みは感じない。
 こんなにも。 こんなにも大きな傷だというのに。
 傷に触れた手のひらを見る。 紅い。 紅い。
 血の色。 肌を塗りつぶす鮮血の紅。 全部。 全部が俺の血だ。
 紅。 ふと、その色を切っ掛けに思い出す。
 今わの際に、俺が頭に思い浮かべたのは一人の少女の姿だった。
 色鮮やかな紅い髪のあの美人。
 学園で見かけるたびに目を惹きつける、鮮烈な紅い髪の美しい先輩。

 ―――どうせ、死ぬのなら。 
 ―――あんな美少女の腕の中で死にたかった、かな。

 ささやかな願い。 ある意味、男らしいとさえいえるであろう願望。 欲望。
 唇が引き攣る。 嗤った、つもりだ。
 人生の最後に思い浮かべたのが、自慢の彼女ではなく赤の他人の姿だなんて。
 ……ああ。 いいや。 そういえば、俺を殺したのは夕麻ちゃんだったっけ。
 こんな目に合うって判っていれば、多少強引にでも胸を揉んでおけばよかったな。
 ははっ。 ははは。 もうすぐ死ぬって言うのに最後までエロ妄想かよ。
 視界が霞む。 目に映った景色、その輪郭が崩れていく。
 終わる。 俺が終わる。 ここで、こんな場所で。 畜生。 畜生。 畜生。
 振り返る人生。 薄っぺらで、くだらない俺の生涯。 けれど。 けれど。

 ―――けれど。
 ―――もしも、この身が生まれ変われるのなら、俺は。

「あなたね。 私を呼んだのは」

 突然だった。
 視界に映りこんだ誰かの影が、俺に声をかけてきた。
 誰だ、いったい。
 霞む視界が捉えるのは曖昧に映る輪郭だけで、もう誰かすら判らない。

「死に―――ね。 ―――、お――――――って―――の。 ――――――――わ」

 クスクスと笑いながら。 影が、何かを言っている。
 何。 何を言っているんだ? よく、聞こえない。
 困惑する俺を、しかし影は解することなく、ポケットから何かを取り出す。
 影の指先で踊る紅い何か。 紅い欠片。 あれは、いったい何だろうか?
 しかし、ギリギリのところで保っていた意識が、そこでついに限界を迎えた。

「―――なら、――――――わ。 ――――の――。 ―――――に―――――――さい」

 意識が途絶える寸前。
 俺の目に映りこんだのは、目の前で揺れる色鮮やかな紅い髪だった。



[9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ