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至誠一貫
第一部
第二章 〜幽州戦記〜
二十四 〜広宗、陥落〜
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差し出した。
「中は?」
「読んでへんよ? これは、歳っちが読むべき竹簡やろ?」
「そうだが。受け取ったのは霞なのだから、私は別に構わぬのだが」
「あかんって。歳っちがウチを信用してくれるんは嬉しいねん。せやけど、アンタは大将。ケジメはきっちりせなあかんやろ?」
「……そうか。わかった」
 竹簡を受け取り、伝令を呼んだ。
「恋に、引き上げよと伝えよ」
「はっ!」


「……なるほど。皆も、見るがいい」
 自陣に戻り、疾風からの書簡に目を通す。
 この短期間にしては、詳細な報告が書かれていた。
「張角ら三人は、城内で厳重な警戒の中にあって接触できていない……ですか」
「疾風ちゃんでも手こずるとは、意外でしたねー」
「ですが、これで奴らが広宗にいる事は確実なのですぞ」
 確か、張角は広宗で病没した、そう記憶している。
 もし、この世界の張角も病なのであれば、警戒が厳重なのも頷けるが。
 ……だが、それならば何故、張梁や張宝は出てこぬのか。
 数では勝るとは言え、退路が断たれている事ぐらい、賊徒も理解していよう。
 もともと、防衛に専念するなど、奴らの概念にあるとは思えぬだけに、この状態が続けば当然、士気は下がる一方だ。
 その程度も理解できぬ集団、という事なのだろうか?
「ん?」
 広宗から、何かが聞こえてくる。
 遠吠えのような……いや、違うな。
 天幕を出ると、恋が広宗の方を眺めていた。
「恋。何か、聞こえぬか?」
「……人が、吼えている」
「人が?」
「ん」
 耳を澄ませてみると、確かに雄叫びのような声がする。
 疾風からの書簡には、そのような事は書かれてはいなかった。
 つまり、我らには未知の何かが、黄巾党にはあるという事なのだろう。
 そうでなければ、ただの賊徒の反乱が、ここまでの力を持つ説明がつかぬ。
「見張りは厳重に致せ。よもやとは思うが、不意打ちがないとは言えまい」
「はっ!」
 伝令にそう申し渡し、私は天幕に戻った。


 それから毎晩。
 鬨の声を上げて押し寄せ、矢を放ち、銅鑼や鐘を鳴らす。
 その繰り返しの日々となった。
 城方は初日の被害で懲りているせいか、打って出る様子はない。
「これで一週間ね。いつまで続けるつもり?」
 軍議の席で、華琳に問われた。
「賊徒が音を上げるまで、と言いたいところだが。そうも行くまい」
「そうね。我らだって、糧秣には限りがあるわ。それに、包囲したまま戦いらしい戦いもなければ、厭戦気分が広がるわ」
「ならば曹操殿、貴殿に良き策がございますかな?」
 意味深に、笑みを浮かべる孔融。
「策を立てたのは私じゃありませんもの。ここで、私が口を出す訳にはいきませんわ」
「ま、まぁまぁ。ご両人とも、そのように。もっと穏便
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