第五十話
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えていたこの者は俺に杖を向けると魔力をぶつけてきた。
どうやらクルト王太子ほどの魔力は無い相手で、本当に一瞬の軽い目眩程度しか感じなかった。
狭い見張り台では充分に扱え無いので、剣を抜くのももどかしく肩口から体当たりをかます。
何本か骨の折れたような音が聞こえるのも気に留めず、俺は魔道士の顔面を殴りつけた。
鼻の骨が折れ、勢い余って折れて飛び散った歯が床に転がり、涎と血とが混ざったものをぶちまけながら倒れたので、素早くローブを切り裂いて紐状にして腕を縛り上げ、それをもう一つ作ると丸めて口に突っ込んで舌を噛み切らないように対処した。
見張りの男は既に事切れており、仕方ないので本来の目的を果たそうと外を見やると、街のほんの近くまで迫って来る軍勢の様子が見てとれた。
思い切り半鐘を打ち鳴らし、その合間に
「敵襲ー!」
と、声の限りに叫んだ。
正門のほうが察知してくれるまでそれを続けようとしたが、異変を察知して駆けあがって来た衛兵と押し問答になった。
捕らえたロプトの魔道士を示し、懐からロプトの魔道書を取り上げて提示しても半信半疑だったが、迫りくる軍勢を見るよう促してようやく緊急事態を納得してくれた。
正門が閉じられるのを目にした俺は望楼を駆け下り、一度アジトへと向かった。
半鐘が激しく打ち鳴らされているのを頓着せずにのんびりしている大勢の市民の姿に平和慣れしてしまった人々の危機意識の欠如を感じてしまう。
大混乱になり身動きが取れないよりはマシかもしれないと言い聞かせ帰り着いた俺は、盾と愛用の槍、それに投槍を数本携えて正門のほうへと急いだ。
正門では、潜入していたリボー側の工作員との戦いがあったようで、いまだ片づけられていない死体とともに血なまぐさい臭いが立ち込めていた。
ここではどうやら衛兵との協力体制が出来ているようでレイミアの手腕に感心する。
俺の姿を認めた彼女がやってきて
「敵さんは攻め手が潰されたようで、壁の向こうでごちゃごちゃ怒鳴ってるけどどうしたもんかねぇ」
「……う〜ん、知らずに交易や観光でダーナに向かってきた人たちを捕らえて、助けて欲しければ開門しろって言ってくるかなぁ」
「交易都市だし、商人見捨てたってなっちゃあその後の商売に響くさね」
「敵を退けるだけなら、俺達には知ったこっちゃ無いって見殺しにするのが常道だろうけれど……」
口ごもって続きをぼかす俺の言いたいことをわかってくれている彼女は、こんな状況にそぐわない柔らかな笑みを浮かべて
「それが出来ない甘ちゃんだから放っておけないのさ」
言葉を口にした後すぐに、任せておきな!と、改めた表情で物語る。
「打って出るのを何回かやることになったら覚悟して欲しい、今はとりあえ
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