Episode1 口論と決闘
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
にじり寄る剣先に俺は理解が追い付かず、ただ凝視するしかなかった。それは横に立つクラインとその仲間も同じだった。
じりじりと迫るその剣が――不意に退かれた。
「やめなよ、アキ」
アキと呼ばれたそいつの肩に手が置かれた。振り返るその顔は本当に煩わしそうなものだった。
「…なに、ジン。この僕を止める気」
「当然だよ」
「いてっ」
頭を軽く叩かれたアキが、頭を押さえ俺をきつく睨んだ。
「…お前のせいで怒られたじゃないか」
「は、はぁ?」
ようやくフリーズから頭が目覚め、クラインに手を貸してもらいながら立ち上がった。立ってみると、さっきまでやたらと高く見えていたそいつの身長は、俺とそう変わるものでもなかった。
立ち居振る舞いが高圧的だったせいで、むやみに長身に見えていたようだ。
「だから〜!お前のせいでジンに怒られたって言って――」
「だからやめなって」
「いてっ、うぅ」
俺に向かって大声を張り上げたアキの頭が再び叩かれた。アキが頭を押さえてその場にしゃがみ込んだ。
なんだが弱々しい。さっきまでの貴族さながらの振る舞いはどこへ行ったのか。それに、さっきからコイツを制している奴も誰なのだろうか?
一瞬そちらに向かいそうになった意識が、ぶつぶつと聞こえて来る声に引き戻された。
「もう、ジンはいつもいつも僕の頭を餅搗きみたいに叩いて…」
視線を下げれば、アキが空中で指をイジイジしていた。…いじけたときに渦巻きを書くのは地面じゃなかっただろうか?
「ゴメンね。連れが失礼をしたみたいで」
「…ん?あぁ、別にいいけど」
アキに向いていた意識が今度はジンに向けられる。
が、すぐさま痛いほどの視線を感じ意識の方向はアキに向いた。
「なぁお前。これ以上ジンに怒られるの嫌だから、僕の邪魔をしたのは赦してやる。代わりにアイテム返せよ」
見ればしゃがみ込んでいるせいで俺の遥か下にあるアキの、中性的で男か女か分からない顔に涙が浮かんでいた。……相変わらず、目つきが鋭いせいで同情の意はこれっぽっちも湧かないが。
「アイテムって…。おぉ!」
アイテムと言われ、開いたシステム画面のアイテム欄には、念願の《ネペントの胚珠》が追加されていた。感動のあまり固まった俺を見て、アキが立ち上がり、俺を睨む。
「あったんだろ!渡せよ!」
「ちょっと待てよ」
クラインが横から口を挟む。無精髭の生えた顎をジョリジョリしながら俺の横に立つ。
「おらぁ事情が良く分かっちゃいねぇけどよ。大概のRPGじゃこういうときは、アイテムはドロップした奴のものってのが常識だろ?」
「そうなのか?」
あまりゲーム慣れしていない俺は思わず聞き返してしまった。クライ
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ