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東方調酒録
第九夜 八意永琳は実験する
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「また未知の薬ですか? 前飲んだ薬だって小町さんっていう友人が増えただけでしたよ」
「彼岸まで行ったのね…… 危なかったわねぇ〜」
責任は感じていないようだ。
「でも今回は塗り薬よ」
「たぶん、 そういう問題じゃないと思います」
「私以外のモノが作った薬は使ってみないと効果がいまいち分からないのよ」
そう言いながら永琳は薬を棚に戻した。
「だからって僕を実験体に使わないでください」
「残念ね、 それじゃあ、消毒と普通の塗り薬でいいわね」
「最初からそうしてください……」
消毒は激痛だったが、塗り薬を塗った瞬間に痛みは感じなくなった。
「これ、お土産です。 前に言ってたやつですよ。 EVE(イヴ)です」
悠は木のケースを開けて中から薬瓶のようなものを出した。
「それが不死の薬と言われるお酒?」
「エリクシル・ヴェジタルという酒で頭文字を取ってEVEです。 リキュールの女王と言われているシャルトリューズの最初の製法で作られています。 意味は『植物の霊薬』ですが、 もちろん本当に不老不死になれるわけではないです」
「へぇ〜……」
永琳が興味深そうにEVEを受け取った。
「飲み方は角砂糖に染み込ませて、かじってください」
「そのまま飲むのではないのね?」
「飲めますけど…… 71度ありますし、ハーブ香もキツイので、 そのままでは飲みにくいと思います」
「でも、 なんで不老不死の薬と呼ばれているのかしら?」
「このお酒が不老不死の霊薬として処方されたからですよ。 シャルトリューズ修道院で製造されました。 アルプスを越え、命からがら修道院に辿り着いた旅人にとっては、まさに命の水だったと思います」
「そうね……本当の不死の薬よりも、その時の命を繋いでくれる薬の方が有難いのかもしれないわね」
永琳はしみじみと言った。
「ありがとう。 今夜にでも飲んでみるわ」
「では、 僕はこれで失礼します」
悠が席を立った。
「お大事にね。 帰りはてゐに送らせるわ」
「大丈夫ですよ、 妹紅さんが待っててくれてますので」
「そう、 姫さまは鈴仙と出かけてるから妹紅も中で待てばよかったわね」
悠は頭を下げ、診療室の扉を開けて外に出た。外で待っていたてゐと挨拶をして永遠亭を後にした。そして、外に出て目に入ったのは焼けた竹と戦っている輝代と妹紅、その横でオロオロしている鈴仙の姿である。悠は永遠亭に戻りてゐに竹林の道案内を頼むのだった。

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