第九夜 八意永琳は実験する
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太陽が真上に来るという刻。幻想郷にある一軒のバー、バッカスでは主人である無精ひげを生やした月見里悠が寝室で寝ていた。竹で作った簡単なベッドの上で悠は静かな寝息をたてていた。寝室は質素なものであった。ベッドの横には水と本や四つ葉のクローバーの栞が置いてある台が一つ。ドアの隣の大きな棚には本とボトルが数本そして、ミノムシの入った瓶が置いてある。服は壁に掛けてあり、それ以外に何も部屋であった。その部屋の棚の隣で藤原妹紅が片膝を立てて床に座り背中を壁に押し当てて目を閉じていた。床には空の酒瓶が散乱している。
悠が「う〜ん」と言いながら三回目の寝返りをした時、妹紅の方が先に目を覚ました。「しまった……」と呟いて、ベッドで眠っている悠の体を揺らした。
「おーい。 悠。 起きろ〜……」
そっぽを向いただけで悠は目を覚まさなかった。「起きろってぇ!」そう言って妹紅は悠の上を向いてる横っ腹をこぶしで殴った。「ぐへぇ」と言って悠が飛び起きた。眠そうな顔で腹を押さえながら、悠は「妹紅さん……」とだけ呟いた。
「もうお昼よ。 永遠亭の診療所に行くんでしょ?」
昨晩、悠はルーミアにかじられた。ちょうどその日に妹紅も店に訪れたのである。悠は未だに竹林の歩き方は分からないので、妹紅に案内してもらおうとお願いしたのであった。妹紅は二つ返事で了承してくれて、今夜は悠の部屋で少し飲んで、慧音の家に泊まると言ったのだが、思いのほか盛り上がりいつの間にか二人とも寝てしまったのであった。
「ベッドに入った記憶がねぇ……。 頭も肩も横っ腹も痛い……」
頭と腹を押さえながら言った。肩を押さえる手が足りないようである。満身創痍であった。悠が出かける準備をしていると妹紅が呟いた。
「せっかく、 慧音の家に泊まれる口実ができたのに……」
「口実と言わず、 いつでも行けばいいじゃないですか?」
「それは、 ほら…… ねぇ〜」
(なんで、 そこで赤くなる)と悠が内心思いながら、ミノムシに藁をあたえていた。明かりが強くなった。嬉しいようであった。
「ミノン。 いっぱい食べな」と言いながら嬉しそうに瓶を指で軽く突っついた。妹紅はその様子をあきれ顔で眺めていた。
「お〜い、もういくぞ〜」
「ちょっと、 待ってくれ」そう言って悠は棚から円形の木のケースを取り出し、ポケットに入れた。「それは?」と妹紅が興味を示して聞いた。悠は「永琳先生へのお土産です」と答えただけだった。
永遠亭に続く竹林は何回来ても迷うと悠は内心で思っていた。同じような竹がそれこそ永遠のように続き、獣道や先人の歩いた道はその落ち葉によってかき消されているのである。妹紅の案内で悠は竹林を抜け、永遠亭の前まで辿り着いた。
「輝代に会いたくないから、 私はここで待ってるわ」
そう言って妹紅は竹に背中を預け
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