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くらいくらい電子の森に・・・
第二十一章
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ら、離れるんじゃなかったなぁ…って。

――でももう手遅れ!
今、ダクトいっぱいに溜めてあるの、なんだと思う?

――超高温の、水蒸気。
吸い込んだ途端、肺が灼け落ちるような高熱の水蒸気で、この部屋を一気に満たしてあげる。
触ったらほぐれちゃうくらい、徹底的に蒸してあげるからね。
…ほら、大切なひとから離れたばっかりに、すごい辛い死に方、することになった。

――一瞬で捉えて逃がさないためには、もっと沢山の水蒸気が必要かな。
それに…使えない端末をいじってみて、絶望する時間をあげなきゃね。
ええと、今…どこにいるのかな…



紺野さんの携帯が、かすかに震えた。
着信は『芹沢』。迷ったけれど、受信ボタンを押して耳にあてた。
「…はい」
『…あんた誰だ』
「紺野さんの、知人です。少し、携帯を預かっています」
わざと機械的に答えた。説明を求められたら、冷静に話せる自信がない。
『あ、そ。じゃあ言付たのむわ。データの配信完了。例のメッセンジャーが、俺の菓子のストックを食い荒らしているから弁償たのむ。以上』
鬼塚先輩…。
『じゃ、切るぞ』
「まって下さい」
『ん?』
「芹沢さんは、MOGMOGの開発に関わっている人、ですよね」
『なんだよ、開発秘話でも聞きたいか』
「僕は、狭霧流迦のいとこです」
芹沢さんが、電話の向こうで押し黙った。警戒するように。
「…流迦ちゃんが、開発に関わってるって…」
…リアクションがない。仕方ないので、もう少し一方的に話をする。
「流迦ちゃんが自分の脳をトレースして作ったプログラムが、MOGMOGの人格をその…構成してるって、紺野さんから聞きました」
『…あの馬鹿』
舌打ちと、押し殺したような声が返ってきた。
「それなら、あの…MOGMOGは」
ずっと気になっていた。もう一度ビアンキと向き合う前に、確認したかった。開発に携わっているこの人なら、きっと答えを知っているはず。
「流迦ちゃん自身…ってことなんですか」
『…何で紺野に聞かないかなぁ』
喉に、何かが詰まったような異物感。僕は押し黙るしかなかった。このまま一言でも発したら、言葉が全部嗚咽に呑まれてしまいそうだ。…やがてドアの向こうが、ゆっくりと歪み始めた。僕は情けないくらい、みじめな泣き顔を晒しているに違いない。
『奴に、何かあったんだな』
男は淡々と、でも噛み締めるように呟いた。
「す…すみま…っ」
声がうわずって、これ以上続かなかった。…やがて、低くて重いため息が、携帯越しに聞こえた。
『…よく漫画なんかで、ネオナチがヒトラーのクローンを作って帝国を復活させるなんて話があるだろ。でもなぁ、同じ遺伝子を持ってても、そいつが長じてヒトラーになる可能性は薄い。人格、ってか、この場合は思考回路と言い
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