暁 〜小説投稿サイト〜
至誠一貫
第一部
第二章 〜幽州戦記〜
二十三 〜二人の勇士〜
[2/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
い」
「私は、後で良い。それよりも、稟も休め。お前は、そうでなくても身体を気遣わねばなるまい?」
「は、はい……。では」
 少し顔を赤くして、稟は出て行く。
 入れ替わりに、風がやって来た。
「お兄さん。孔融さんと韓馥さんから、使者がやって来ましたよー」
 ほう。
 先の軍議では、あまり実のある発言もなかった筈だが。
「風。ただの使者か?」
「いえいえ。どちらも将のようですねー」
「ふむ。将か……いいだろう、通せ」
「御意ですよー」
 私は、記憶を巡らせる。
 孔融は、その名の通り、あの孔子の子孫。
 確か、曹操に仕えたが、直言のあまり曹操に疎まれて、処刑された筈だが……将となると、思い浮かばぬな。
 一方の韓馥は、冀州刺史であったが、公孫賛の圧迫を袁紹につけ込まれ、冀州を奪われたという末路を辿る事になった。
 ……此方は、後に袁紹や曹操に仕えた将がいた筈だ。
「お兄さん、お連れしましたよー」
「お通し致せ」
「御免」
「失礼致す」
 入ってきたのは、一目で武官とわかる女子(おなご)
 それも、二人共に相当の遣い手と見た。
「義勇軍を率いる、土方にござる」
「お初にお目にかかる。あたしは、冀州刺史、韓馥に仕える張儁乂」
「同じく初めて、ですな。私は、青州刺史孔融の客将、太史子義と申します」
 ……そうか。
 張コウは袁紹に仕えたが、その献策を取り上げなかった為に袁紹が敗れ、その後は曹操の許で武功を上げた勇将。
 一方の太史慈は、孫策と一騎打ちの末、その人物を見込まれて仕えた、此方も優れた将。
 やはり、私の知識を頼りにするのは、危険が付きまとうかも知れぬな。
「土方殿。我らの事、ご存じのようにお見受け致すが?」
「然様ですな。何処でご縁がありましたかな?」
「……いや。一方的に、拙者が存じていたまででござれば、お気になさらず」
「では、その件については問いますまい。本日は、昨夜の事について、糺しに参った次第」
「返答次第では、主人に申し上げますので。ご承知おきいただきたく存じます」
 華琳は何も言って来ぬところを見ると、我らの真意に気づいているのだろう。
 だが、孔融と韓馥には、華琳ほどの洞察力は望めまい。
 それで、二人を遣わした……そんなところか。
「承った。昨夜の事とは、我が軍が行った、賊討伐の事でござるな?」
「如何にも。まず、我々は今、広宗の黄巾党本隊を囲んでいる最中。それを知りながら、何故小勢に過ぎぬ賊を討たれたのか?」
 張コウが私を見据えて、そう言った。
「我が軍の行動が、蛇足に過ぎぬ。そう仰せか?」
「然様。ただでさえ、黄巾党に比べて我々の兵数は少ない。なのに、徒に兵を消耗するような真似、解せぬ」
 なるほど、至極尤もな疑問だ。
「理由はいくつかあ
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ