第一章 4
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馬鹿だろうと何だろうと、僕には関係のないことが、『試練』の内容や日にちを忘れられては困る。何せ、僕らが神になれるかなれないかがかかった試験だと言うのに…。
「おっと、今私のことを馬鹿だとか、思っただろう?残念でした、そんなんじゃないよ。『試練』は、己を試す為に有る物だ。だから、こちら側はセッティングしないんだ」
いつもそう、僕は何も言っていないのに心が読めるのかどうかは分からないが、何を考えているのか当てるのが得意な人だ。初めて会った時から。
(こちら側は、仕掛けてない?)
仕掛けてないって…一体どういうことだ?
「分からない、って顔してるね優等生君―単純な事なのに、頭が良過ぎるせいか簡単な答えも見えないのか。じゃあ、逆に聞いてみるとしよう」
ローズさんは少し間を置き、僕を試すような目つきで見てくる。その様子が、僕の知っている適当な人生をこれまで送ってきただろうと思わせる、ローズさんの顔ではなかった。
「―君は、これから先神になると言うのに、僕達が指定したレールを何ともなしにこなし、神になってからも、その道の上をただ言う事を聞いて歩いて往くのかい?」
神になったのに、他の神―僕達からすれば、上司にあたる人の言った事をそのまま忠実に聞いて、仕事をするのか?ということか。
人間社会では、上司の命令は絶対だけど、僕達の目指す神職では…。
「神は人々に希望や幸せを与える事が、第一の優先事項です。ですから、他人の言うままに従い行動するのではなく、自らの判断で何処まで対処できるかが問われます」
これで合っているかなんて分からない。人によって考え方は違うし、取る行動だって異なる。でも、自分で何かしらのアクションを起こさなければ、始まらない。人生は誰かに決められて、進むものではないのだから。
「合格!流石は期待の新人で、僕の最有力部下候補!」
(この人、何処まで本気なのか分からないよ…)
まぁ、褒めてくれているみたいだから、悪い気はしないな。
「そんな訳で、優秀な君に大きなヒントをあげるよ―人間だった時の自分の記憶を思い出してごらん。良い事も悪い事も、全部、ね。それがこれからの勝負の勝敗を決めるよ…二人の記憶が」
僕の記憶―あの辛くて忌々しい、今すぐにでも消し去ってしまいたいものが?しかも、僕とエドの記憶がヒント?さっぱり解からない。
「有り難うございます。何の事だか今は解かりませんが、そのヒントを頼りにします―それと」
今にも飛んで帰りそうな、ローズさんの服の袖を僕は掴んだ。逃げられない為に。
「な、なんだい?リオ君」
突然の大胆な僕の行動に驚いたのか、僕の名前をちゃんと呼ぶ。
「…居候要請許可書に、勝手に僕達の素性がばれる内容の手紙を一緒に、入れましたね」
もはや僕は先輩を敬いもしない、冷めた目線を送り、袖を掴む腕に
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