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剣の丘に花は咲く 
第八章 望郷の小夜曲
プロローグ 新たな夢
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そうとするが、結局声が出ずパクパクと口を開けたり閉じたりしている妖精に、少女は俯いたまま話し掛けた。

「ここは……何処だ……?」
「え、えっと……そ、その……う、ウエストウッドの、む、村です……」

 独り言のような問いかけに、妖精はどもりながらも答える。

「ウエストウッド? ……それは、何という国にあるのですか?」
「え? く、国? そ、その……え、えっとあ、アルビオン浮遊大陸にある……あ、アルビオン王国です……けど……」

 妖精の答えに、少女は首を一つ捻ると、妖精に顔を向け再度問いかけた。妖精は、向けられる思いのほか強い視線と声の強さに押されながらも、つっかえながらも律儀に答える。

「浮遊? まさか、ここは浮いている大陸の上なのですか?」
「そ、そうですけど……あの……アルビオンを知らないんですか?」

 当たり前のことを知らないことを不思議がるように、首を傾げる妖精の姿を見て、まさかという思いに囚われた少女は……震える声を微かに漏らした。

「ま、まさか……ここは……妖精郷なの、ですか……?」
「……あ、あの?」

 身体を戦慄かせながら、何やら呟いている少女を心配するように、妖精が声を掛ける。

「えっ、あ、はい……何でしょうか?」
「わ、わたしは、ティファニアといいます……そ、その……あの……あなたは……」

 妖精の心配気な声で我に帰った少女に、妖精はおずおずと名前を問いかける。
 その健気な様子と可愛らしさに、ふっと、少女の頬に柔らかな笑みが浮かんだ。
 ティファニアと名乗った妖精は、少女が浮かべた笑みに見とれるように惚けた顔をしたが、凛とした少女の声で我に帰った。

「失礼しました。先に名を名乗らせるなど……私は―――」
「? どうかしましたか?」

 ベッドの上で、胸に手を当て自身の名を名乗ろうとした少女であったが、不意に迷うような素振りを見せ、口ごもった。何か考え込むように眉間に皺を寄せた少女に、ティファニアが声を掛けると、何かを決心したように小さく一つ頷いた少女が、晴れやかな笑みを浮かべ口を開いた。



「私の名は―――」



 王の剣(エクスカリバー)はもうこの手にはなく。


 もはや王でなくなったこの身。


 ならば、王の名を名乗るのではなく。


 失った筈の名を名乗ろう。


 王としての自分を否定するわけではない。


 既に答えは得ている。


 仲間と共に駆け抜けたあの終わりに……間違いなんてなかったと……。


 だからその全てをこの胸に宿し、誇りを持って名を名乗ろう。





 私の名前は―――。





「――――――アルトリア……アルトリア・ペンドラ
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