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東方調酒録
第八夜 ルーミアは捕食する
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鈴さん、 ありがとうございます」
「いえいえ、 それよりも傷は大丈夫ですか?」
美鈴がつまみ上げたルーミアを抱きかかえながら言った。
「まったく、 ルーミアがお腹壊すじゃないのよ」
阿求であった。先ほど叫んだのも阿求なのだろう。
「でも一番必死に走っていたのは阿求さんでしたよ」
腰に二本の刀をさした銀色の髪の少女が言った。魂魄妖夢である。妖夢は悠を抱え起こした。阿求はすでに扉を開けて待っていた。手には階段に置いてあったコップを持っている。悠は妖夢の助けを借りながら店の中に戻った。

 ――店内に戻った悠はワイシャツを脱ぎ、美鈴から右肩の手当てを受けた。
「ルーミアの口が小さくて良かったですね。 あまりもっていかれていないみたいです。 明日は念のために竹林の診療所に行った方がいいですよ」
美鈴が言った。ルーミアはカウンターの椅子に座ってまだ物欲しそうな眼で悠を見ていた。悠は身の危険を感じて立ち上がり、冷蔵庫から生肉を出した。
「牛肉ですけど、 食べますか?」
「たべる―!」
そう言って、悠から渡された箸を無視して手掴みで生のまま牛肉を食べていた。悠は子どもを見守るような眼でルーミアを見ていた。
「怒らないんですね?」
妖夢が聞いた。「怒るようなことしてませんから」と悠は答えた。
「これは何? 変なにおいね」
阿求が赤い液体の入ったグラスを差し出して聞いた。悠が入口に座って飲んでいたカクテルであった。
「ああ、 それは白酒にトマトジュースと塩を混ぜたものだよ。 失敗だったけどね。 名前を付けるんならナマクラだよ」
妖夢が微妙に反応した。
「白酒ってパイチュウのこと?」
美鈴が聞いた。
「そうですよ。 小刀という白酒ですけどトマトジュースと混ぜたら味の切れがなくなって、完全に刃こぼれした刀になったよ」
美鈴が一口飲んで、「本当だ」と呟いた。
「でも、 なんでトマトジュースと混ぜたのよ?」。
「幽香さんが大量に季節外れのトマトを持ってきてくれたんだよ。 それで何かカクテルを作ろうと思ったら近くに白酒があってね」
悠が四リットルはありそうなボトルに入ったトマトジュースを出した。
「どんだけ持ってきたのよ」
阿求が呆れた顔で言った。
「それはもう大量に……」
「それなら、 そのトマトジュースで何か作ってよ」
美鈴が注文した。
「はい」と悠は答え、ビールを取り出し、トマトジュースと同じゴブレットに入れステアした。
「レッド・アイです。 シンプルだから誤魔化しがきかない一杯です」
悠は自分含めて全員の分を作った。もちろんルーミアの分もである。ルーミアは受け取ると一気に飲み干した。
「人間の血と同じぐらいおいしい」
悠を含め今この場にいる者には理解できない比喩表現であった。
「レッド・アイはリバイバーカ
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