第四十九話
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ような不心得者が居た場合に課される刑罰は当然重い。
世襲の市長はこれに使用料なり税を課してその場限りの財を得るよりも、街の発展でもたらされる税収にこそ価値があると見たのではないだろうか。
その見通しは当たったようで、賑やかで活気のある街ぶりは街の周囲に豊かな自然に恵まれたミレトスやターラなど他の大きな交易都市に見劣りするものでは無いことを、両都市を実際に目にした俺が思うくらいだ。
とはいえ、過去の軍事拠点としての趣きは街の至るところに残っており、かつては敵の襲来をいち早く見つけては市民に危険を知らせた望楼、街をぐるっと囲む城壁上に工夫された切り出しや、耐久性を増す為に築かれた円筒状の各塔などがそれを物語っている。
ただ、長いこと戦から遠のいていることもあり補修や点検を要するような場所の多くが後回しにされており一抹どころでは無い不安があった。
街を実際に歩いて街の地形を体で覚えさせ、アジトに戻っては図面を少しずつ書きあげていく、歩きながら書いていたら街の衛兵に咎められる危険性が充分予見されるからだ。
その作業を続け、ある程度満足行く物が出来る迄には二週間以上の時間を要した。
また、街をかつて囲んでいた空掘の一部が崩れて低くなっていたり埋められていたりなど、平和でゆったりした暮らしの代償に、防衛上の措置が軽んじられていることを考えさせられてしまう。
今のところ一番気を付けなければならないと思っているのが敵勢力があらかじめ潜入しており、リボーの軍勢が攻め入って来た時に誘因することだ。
例えば前述の望楼に付いている見張り兵……いまや兵では無いようだが、を殺すなり行動不能なりにさせて敵軍襲来を知らせないようにし、この街の正門を閉じようとする衛兵を同じように邪魔してしまい、無傷で軍勢を街の中に侵入させてしまえば取り返しがつかないだろう。
そんなことに思いを馳せていると
「どうしたんだい? 難しい顔して考え込んじまって」
アジトの外に何個もある水瓶からひんやりした水を俺の為に汲んできたレイミアはそう言うと、ここまで書きあげて問題点も記した街の図面を覗きこんだ。
このアジトは正門から離れているものの一軒家で、街の外壁に近く、いざという時の為に地下道を少しずつ掘っている。
これは夜中などに小規模の人数で夜襲をかけたり、要人を脱出させる為だ。
併設してある小屋や納屋に掘り出した土を詰め、庭を上げ底のようにしてその上に草花を生やしてカモフラージュしてはいるが、これ以上の土の置き場所は考えねばならないな……
「う〜ん、ダーナに入る時の身元確認みたいなのが杜撰だったから工作員みたいなの入り放題だなって思ってさ」
「なるほどね、要所に割く人数をそれぞれ一人二人増やしてみるかい?」
「それだけの余裕あるか
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