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ドン=カルロ
第三幕その六
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らばよい」
 そう言うと腰から剣をゆっくりと引き抜いた。
「わしがこの愚か者を取り押さえよう」
 惨劇が起こりかねなかった。王もカルロも引かない。互いに睨み合っている。皆その出来事に驚き動くことが出来なかった。そのまま父と子の惨劇が起ころうとしていた。その時だった。
「お待ち下さい!」
 それはロドリーゴだった。彼は王とカルロの間に入ってきた。
「侯爵!」
 一同は彼の行動にさらに驚いた。
「殿下」
 彼はカルロに身体を向けた。そして言った。
「気をお鎮め下さい」
「ああ・・・・・・」
 カルロはそこでようやく我に返った。彼の言葉でハッと気付いたのだ。
「そして剣をこちらへ」
「うん・・・・・・」
 そして言われるまま剣を差し出した。ロドリーゴはそれを受け取ると王に差し出した。
「どうぞ」
 一礼してそれを差し出す。王は無言で受け取った。
「何と鮮やかな・・・・・・」
「流石だ」
 彼の評判は元々高かった。だがそれを見て皆さらに感服した。
「侯爵、よくやった」
 剣を受け取った王は彼に対して言った。
「今の功績によりそなたを公爵に任じよう」
「有り難き幸せ」
 ロドリーゴは頭を垂れた。カルロは衛兵達に取り囲まれた。
「連れて行け。頭を冷やさせるがいい」
「ハッ」
 衛兵達は王の言葉に従いカルロを連れて行く。カルロは周囲を衛兵達に取り囲まれそのまま連行される。
「・・・・・・・・・」
 彼は完全に魂が抜けていた。呆然と歩いている。
(殿下・・・・・・)
 ロドリーゴは暫し彼を見ていたが視線を外した。そして火刑台を見た。
 フランドルの指導者達はそこに縛られた。そして今薪に火が入れられようとしている。
(私の全てを賭ける時が来たな)
 彼は何かを決意した。そして席に戻った。
 火が点けられた。フランドルの者達の苦悶の声が聞こえてきた。それは炎と共に広場を覆い何時までも残っていた。

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