第一部
第二章 〜幽州戦記〜
二十二 〜語らい〜
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だからな。
「如何なされました、曹操殿?」
「軍議の最中なのでしょう? 構わないから、続けて。傍聴させて貰いたいのよ」
「傍聴、でござるか」
「ええ、そうよ。入らせて貰うわ」
うむ、何とも強引な御仁だ。
私はまだ、可否を答えておらぬのだが。
ずんずんと、天幕に入っていく曹操。
「どないしはったんですか、曹操はん?」
「今は軍議中。それを承知の上ですか?」
霞も愛紗も、訝しさを隠す事はなく、曹操を見ている。
「非礼は承知よ。だからまず、それについてはこの通り」
ふむ、あっさりと頭を下げるとはな。
誇り高き人物の筈だが、ただ傲岸不遜ではないと言う事か。
「でも、まともに訪ねたら、まずこうして軍議を見せて貰うのは無理でしょう?」
当然だ。
軍議を中断するか、若しくは待たせるか。
何れにせよ、我らは曹操の麾下ではない。
共通の敵に対する協力関係ではあっても、全てを公開すべき義務などない。
だから、曹操の行為は咎め立てこそすれ、容認出来るものではない。
「どういうおつもりか? 貴殿ほどの御仁が、斯様な無法が罷り通るとでも思っておいでか?」
「思わないわ。同じ事をされたら、私ならただではおかないわ」
「ほう。では、その覚悟がおありで参られた……そう、受け取って宜しいのですな?」
私がそう言った刹那、夏侯惇が剣に手をかけた。
「華琳様がそう仰せられても、みすみす斬らせる訳にはいかん」
「春蘭。止しなさい」
「し、しかし。華琳様!」
「大丈夫よ。土方は私を斬らない。いいえ、斬れないわ」
「何故、そう思われる?」
「理由はいくつもあるわよ。まず、貴方の挙兵名目は、黄巾党征伐。共通の目的があり、共に行動すべき関係でしょう? その相手を斬れば、その分の負担は己に返ってくる。ましてや、私の軍は精兵揃い。それを欠くという点で、利は全くないわね」
「なるほど。他には?」
「非礼を承知でやった事だけど、私は孔融や韓馥は当てにしていないわ。だから、唯一頼りになる貴方のやり方を、この目で確かめておきたい。純粋に興味があるだけで、他意はないわ。そんな相手を手にかける程、貴方は狭量じゃないでしょう?」
「……随分と、買い被られたものですな」
「そう? これでも人を見る目はあるつもりよ? これでも不足なら、校尉として無位無冠の貴方に命じる……という事も出来るわね」
「強権発動ですな。あまり、感心は致しませぬが」
「そうね、私も好まない。だから、非礼のお詫びとして、もう一つ。私の真名を預けましょう。以後、華琳と呼んで構わないわ。勿論、その似合わない敬語も必要ないわ」
「華琳様! 何もそこまで!」
「春蘭。私は権力づくは好きじゃないし、彼は私の臣下でもない。此方から頼み事をするのよ、相応の対価だと私は思う
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