アインクラッド編
月夜の涙と誓い
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断言できる。弱くて戦えなかった私も、情報を知らずに宝箱を開けたダッカ―も、そんなダッカ―の行動を安易に承諾していたササマルもテツオも、キリトに頼って自分たちで情報を集めようとしなかった私たち〈月夜の黒猫団〉全員にも責任がある」
サチの言葉をキリトは黙って聞いていた。
そんな考え方、思いつくはずもなかった。
キリトの中では悪いのは自分だと、自分が加害者で彼らは被害者だと思い込んでいた。
「だからキリト一人が背負い込まなくて良いんだよ。あれはみんなで背負うべき罪だから」
その言葉はキリトの心の戒めの鎖を吹き飛ばしていく、
「一緒に背負うよ。あの時、弱くて怖がりで何も出来なかった私も」
サチに頬に涙がこぼれ、
「それで、もう守ってもらうのは終わりにしたいんだ」
気付けばキリトの視界がぼやけ、
「だって私はキリトの背中を見ているんじゃなくて、隣で、肩を並べて戦いたいって思えたから」
涙が、一筋、流れていた。
「今はまだレベル差もあるし、隣で戦うには頼りないかもしれないけど――――――」
そこでサチはキリトの目をまっすぐ見た。二人の視線が交錯する。手が差し出される。
「―――――これから、よろしく、キリト」
こうやって手を握り合ったことがあった。
初めて、〈月夜の黒猫団〉と出会った日。
『じゃあ、わたしでよければ付き合うよ』と言って、キリトは一人ひとりと手を握り合った。
その時、サチとも同じ言葉を交えて手を握った。
だが、あの時は二人には大きな心の隔たりがあった。
キリトは、レベル差が大きくある彼らの手伝いをしながらも、やはり自分はビーターであると、仲間になるべきではないと思っていた。
サチは、攻略組になること、フィールドで戦うことが本当は怖くて、本格的に攻略組参加に向けて動き出した自分のギルドから逃げ出したかった。
お互いに傷痕を舐めあう、悲しい関係だった。
それを終わりにしようと。
今のサチの、よろしく、と言う言葉はあの時とは大きく意味の異なる、強い覚悟のこもった言葉だった。
「ああ・・・・・・」
ぼやけた視界の中でキリトはサチの顔を見据えた。
以前の、彼女とは比べようもない、強い意思の籠もった瞳。
自然と、キリトの右手は動いていた。
・・・・・・もしかしたら、この選択も、間違っているのかもしれない。
いつか、後悔する時が来るかもしれない。
サチを危険な攻略に参加させなければ良かったと、思う日が来るかもしれない。
でも。
それでも。
前に進みたいと思う気持ちは同じだった。
「こっちこそ、よろしく、サチ」
手を握り返す。
二人の仮想の温かさが交わる。
涙で濡れた顔でお互い微笑む。
こ
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