アインクラッド編
月夜の涙と誓い
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ながらも芯のある表情だ。
こんな晴れやかなサチの笑顔を見るのはいつぶりだろうか。いや、もしかしたら初めてかもしれない。
「キリト」
すると、ぎゅっとサチが手を握ってきた。
突然のことで驚くが、振りほどく理由もない。
仮想の温かさがキリトを伝い、
「ゴメンね。あの日、キリトを探せなくて、みんなに録音結晶のことを隠してて」
体の内から湧き出てきた冷気と衝突した。
急な話題の転換にキリトの、攻略組トップクラスと言われている思考回路も正常に動かない。
あの日。
それは間違いなく、トラップにかかり、全員の命が危機に陥った、キリトが〈月夜の黒猫団〉から逃げた、あの日。
その話題は血盟騎士団ギルドホームで再開してからお互いに触れていなかった、避けていた、と言ってもいいであろう話題。
キリトも、そして彼らもその話を持ち出すことで、あの時のことを思い出すことが怖くて出来なかったのだ。
「・・・・・・」
「ずっと謝りたいと思ってたんだ」
「・・・・・・違う。違うよ。サチが謝ることじゃない。あれは・・・・・・わたしのせいなんだ」
キリトは首を大きく横に振る。
そう。あれは自分のせい。馬鹿で愚かだった自分が招いた結末だ。
それをサチが背負うのは筋違いだ。
キリトはそれを信じて疑っていない。
対して、サチは首を、
縦に振った。
「・・・・・・え・・・・・・?」
「私、ホントは攻略に参加することをあの時は望んでいなかった。だから、ケイタは嬉しそうに提案してたけど、私はギルドにキリトが入ってくれることを嬉しいと思いながら、心の片隅で、攻略に参加しないといけないって怖かった。練習を手伝ってもらいながらキリトに守ってもらってばっかりで、いつ呆れられて、見捨てられるかって怖かった」
サチは微笑みながら続ける。
「だから、記録結晶にキリトが残した言葉を知って私は――――――嬉しかったし、辛かった」
「サチ・・・・・・」
「キリトが一緒にいてくれた理由、一人でいるより私たちといた方が楽しかったって言ってくれて、こんな私でもキリトの役に立ってるって分かって嬉しかった。でもね、キリトが自分と同じで、弱い部分も持っている普通の女の子だって気付けなかった自分が悔しかった」
「サチ・・・・・・っ!」
「キリト」
もう一度、丁寧に名を呼ばれてキリトは体を竦める。
「もしかしたらさ、キリトがやったことは間違ってたのかもしれない。キリトの言うように、レベルを隠して情報を教えなかったことが、あの事件に繋がってたのかもしれない。でも、それはあくまで原因の一部だよ。キリトが悪くない、なんて私には言えないし、言う権利も資格もない。でも、キリトだけが悪かったわけじゃないってことは
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