第四話「翡翠のエンヴレイムを持つ者」
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巻く風に視線を向け、これは無駄だ、と悟る。
炎を御剣の方に噴射させ後退しようとするアケミ、しかし御剣の背後で渦巻いていた風が彼女に牙を向く。
無数の小さい鎌鼬が彼女に迫る、咄嗟に炎の壁を前方に展開させ防御態勢に入ったが。鎌鼬はそれをするり、とすり抜け彼女に直撃。
「しまっ……!!(相性なんて……冗談じゃないわよ!」
炎の壁を爆発させ御剣の視界を遮る。
その隙に掌に炎の球を形成し、それを御剣に向けて噴射。何とか御剣との距離を置いたアケミはそのまま重力に従い落下。
ふわり、と床に着地すると彼女と同じコートを羽織った男が彼女に状況説明を求めた、どうやらアケミを援護する為にやってきたらしい。
「アケミ!あれは何だ……?」
「裏切り者、翡翠のエンヴレイムよ」
「あれが噂の、なるほどな……」
男は背後で群れを成している紋章使い達に手で合図をする、紋章使い達は不慣れな動きで陣形を作っていく。
アケミのジト目が紋章使い達に突き刺さる。
「何、あれ」
「あぁ……すまんな、支部の守りを固める為に本部には新米君たちしかいないんだ」
アケミははぁ、とため息をつくと桜の花びらの形をした炎を造り出しそれを自身の周囲で回転させる。
「アーノルド達の護衛にでも回したら?あたしの巻き添えを喰らいたく無かったらね」
直訳すると邪魔だからどっか行け。だそうだ。男は苦笑いをすると彼女から離れ新米紋章使い達に合図を出す。
「気をつけろよアケミ」
「わかってるわよ、アンタもね。敵がコイツ一人とは限らないわ」
上空で爆音が轟く、アケミに迫る風の刃。
空中で停止していた御剣が動き始める、右手に翡翠色の刃を持つ刀を手にして。
御剣が刀を振るうたびに風の刃がアケミを襲う、彼女はそれを一つ一つ丁寧に回避していき、桜の花びらの形をした炎を一つ、また一つと増やしていく。
桜の花びらは自身の意思を持つかのように風の刃を回避し御剣に接近。
「……」
単独行動する炎の球が御剣を翻弄、だが御剣はそれを物ともせずにアケミに迫る。
アケミへの攻撃をさせまいと、桜の花びらが御剣の間近で爆発。彼は風の盾で炎、爆風をやり過ごす。
(今ッ!!)
煙が彼の視界を遮る、これで死角を作り出すことに成功した――!
僅か一秒足らずで短剣に炎を纏わせ、残り三つの桜の花びらを同時に御剣に向けて飛翔、一斉に爆発させる。
三方向からの同時攻撃、流石にこれは対処できないだろう、そう彼女は思っていた。
「温い、温い」
強い殺気が煙の向こうからアケミの肌を突き刺す。
あざ笑うかのような彼の笑みとそれに相反する冷え切った瞳。彼の左手の甲に刻まれた翡翠のエンヴレイムがギラギラと光る。
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