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ドン=カルロ
第二幕その六
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るようにと」
「わかりました」
 そして彼女は僧院に入っていった。やがてカルロが出て来た。
 彼はエリザベッタの顔を見て青くなっている。それを見た公女は密かに思った。
(早く私にその気落ちを仰って下さればいいのに)
「あの」
 そこでエリザベッタが皆に対し言った。
「これで何処かでお茶でも」
 彼女は金貨を女官達の一人に手渡した。人払いである。
「わかりました」
 皆頭を垂れその場をあとにした。こうして僧院の前にはカルロとエリザベッタだけとなった。
 カルロはゆっくりとエリザベッタに歩み寄る。そして目を伏せて跪いて一礼した。
「お立ちなさい」
 エリザベッタはそんな彼を立たせた。
「お話とは何ですか?」
 彼は表面上は何とか平静を取り繕いながら尋ねた。
「母上にお願いがあって参りました」
 カルロも息子として彼女に答えた。
「一体何をお願いに来たのですか?」
 彼女はわかっていながらも再び尋ねた。それはいささか儀礼めいたものであった。
「私はフランドルに行きたいのです。どうもこのスペインの空気が合わないものでして」
「奇妙なことを仰いますね」
 彼女はあえて冷たい声で言った。
「貴方はこのスペインの後継者だというのに」
「それは・・・・・・」
 カルロはその言葉に対し息を詰まらせた。
「答えなさい、我が子よ」
 彼女はこの時はまだ己を保とうとしていた。そして彼を自分の子と呼んだのだ。しかしそれが逆効果になってしまった。
「その名で呼ぶのは・・・・・・」
「それでは何とお呼びすればよろしいのでしょう?」
「・・・・・・・・・」
 カルロは答えられなかった。重苦しい空気がその場を支配した。
「フランドルの件は私が陛下にお話しておきます。それではこれで」
 彼女はそう言うとその場を去ろうとする。
「お待ち下さい!」
 だがカルロはそれを急いで引き留めた。
「どうしたのです、まだ何か言う事があるのですか?」
「貴女は私に言うべき言葉がある筈です!」
 カルロはエリザベッタの手を掴んで言った。
「何をですか!?」
 彼女は今自分の心が大きく傾いたのを悟った。だがそれに対し必死にあがらった。
「離しなさい」
 彼女は自分の手を掴むカルロに対して言った。
「はい・・・・・・」
 カルロはその手を離した。
「唯一日とはいえ永遠に愛し合おうと誓ったというのに。貴女は何故私を避けられるのですか」
「それは・・・・・・」
 今度はエリザベッタが言葉を詰まらせた。そして顔を俯ける。
「私が愛していたのは大理石の像なのですか!?心なぞ一切持たない。貴女は私に対して愛情など全く持ってはいなかったのですか!?」
「そんなわけでは・・・・・・」
 彼女は自分の心の中にある本当の気持ちはよく知
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