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至誠一貫
第一部
第二章 〜幽州戦記〜
二十一 〜覇王、見参〜
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方の事は、秋蘭からも聞いているわ。この短期間に、かなりの戦果を上げているようね」
「いえ、皆の働きの賜物にござれば。拙者は何の取り柄もなき男にござる」
「ふふ、そうかしら? だとすれば、従っている将兵は、随分と不幸ね」
「不幸と言われるか」
「そうよ。有能な将は、有能な主人に仕えてこそ、真価を発揮するものじゃなくって?」
「例えば、曹操殿のような御方、という事ですかな?」
「ええ。でも土方、貴方の場合は単なる謙遜でしかないわね。そうでなければ、この戦果の説明がつかないもの」

 曹操は、不敵に笑う。
 見た目は小柄な美少女だが、それに騙されると手痛い目に遭うだろう。
 身に纏う覇気、醸し出される威厳、どちらも並々ならぬものだ。
 松平容保公も、いや、上様ですら、此処まで身が竦む程のものはなかった。
 方々には恐れ多い事だが、やはり器が違いすぎるのやも知れぬな。

「お褒めに預かり、恐悦至極に存じます」
「……郭嘉。ちょっと、いいかしら?」
「は、はい!」

 不意に話を振られた稟は、眼鏡を持ち上げる。

「この男は、どのような人物か?」
「……恐れながら、お訊ねの意味がわかりかねます」
「あら、そう? なら、聞き方を変えましょう。貴女は軍師だそうね、軍師から見て、土方という人物はどう見えるか?」
「……では、お答えしましょう。ご自身でも確たる戦略、戦術を以て戦に臨む事の出来る存在です」
「ふーん。それなら、軍師は要らない筈よね? それなのに、どうして貴女は仕えているのかしら?」
「はい。歳三様は、ご自身のお考えだけに頼らず、周囲の意見を非常に大切になさいます。その上で、適切と思われる方針を定め、判断を下される。ですから、軍師としても、よりよい助言を、と緊張感を持ってお仕えできるのです」
「なるほどね。では張遼。董卓は土方と共に行動し、その指揮を土方に預けたと聞く。何故かしら?」
「それは、歳三が見せた手腕や思いますわ。稟がさっき言うた通り、歳三は兵の損害を出さへんよう、戦いますよって」

 霞は、空気を察したのだろう。
 私の呼び名を、咄嗟に変えるとは……やはり、機転が利くな。

「ふむ。関羽は? 公孫賛も、董卓と同じく、土方を信頼しているようだけど?」
「はい。歳三殿は、己の未熟さを悟らせてくれました。歳三殿に出会うまでの私は、武勇に任せて敵を倒す事のみ。周囲が見えていない、ただの猪でした。今ではこうして、一軍を率いる事が出来るのが、何よりの証です。そして、公孫賛殿もまた、歳三殿が叱咤激励し、太守としての自信をつけていただけました。これで、如何でしょうか」

 愛紗の受け答えも、見事だ。
 淀みなく、それでいて巧みに話を作り上げるとは……ふふ、これは意外だな。
 一方、曹操は……満足
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