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至誠一貫
第一部
第二章 〜幽州戦記〜
二十一 〜覇王、見参〜
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 ……だが、この華やかさだけは、一種独特のもの。
 殺伐とした時代である事に変わりはないのだが、その中にも時折、安らぎすら感じる。
 新撰組から蝦夷共和国に至るまで、戦いづくめの日々であったからなのか。
 ふふ、近藤さんや総司が今の私を見たら、何と申すだろうかな。

「……む?」
「じーっ」

 ふと、我に返る。
 目の前に、恋の顔があった。

「……歳三、遠くに行っていた」
「遠く?」
「ん。歳三、どこにも行っちゃ駄目」
「……私は、此処にいるではないか」

 恋は、頭を振り、

「……皆、寂しくなる。恋も、寂しい」

 そう言って、私の頭を抱えた。
 ……つまりは、抱き締められた格好。
 豊かな胸が、私の顔に押し付けられているのだが、本人は……無自覚らしい。

「こ、こら、恋! ご主人様に何をする!」
「恋ちゃんは大胆ですねー。その胸を武器に、お兄さんを誘惑ですか?」
「……まぁ、恋がそんな計算高い真似するとは思えへんけどな」
「恋の胸に、理性が……。そして、歳三様に逆らう事も出来ず、二人は……。ブハッ!」
「り、稟殿が一大事なのです!」
「またか……。稟、ほら上を向け! とんとんするぞ!」

 ……騒動になってしまったようだ。

「……? 恋、何か悪い事、した?」

 張本人がこれでは、誰も責められぬのだが。

「恋。とりあえず、腕を解いてくれぬか?」
「……?」

 万力に締め付けられたようで、少々痛いのだが。
 それに、この格好のままは……どう見ても、周囲から誤解を受ける。

「私は、何処へも行かぬ。案ずるな」
「……ん。わかった」

 やっと、恋は離れてくれた。
 ……さて、後始末もせねばならぬな、これは。
 その夜は、愛紗を宥め賺すのに、一苦労であった。



 冀州に入り、暫くは平穏が続いた。

「どうやら、黄巾党は決戦のため、皆広宗に集まっているようです」
「他の小さな盗賊さん達も、個々に討伐されるのを恐れて、皆広宗に逃げ込んだみたいですねー」

 疾風と風の探索だ、抜かりはあるまい。

「逆に一網打尽にする機会、とも言えるが。周倉、廖化。張角について知っている事があったら話して欲しい」

 愛紗の言葉に、二人は顔を見合わせる。

「姐御。それが……俺、大賢良師、いや、張角には会った事がねぇんだ」
「面目ねぇが、あっしも同じでさぁ。張宝、張梁も、三人いつも一緒、ってのは聞いてまさぁ」
「それは妙だな。黄巾党は、宗教の類、と思っていたのだが」
「又聞きで悪いけどよ、会った事のある奴の噂ならわかるぜ、大将?」
「それで構わぬ。どのような噂だ?」
「何だか知らねぇが、一度会ってきた奴らは皆、口々に『萌えぇぇぇっ
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