第一部
第二章 〜幽州戦記〜
二十一 〜覇王、見参〜
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が、その様子では、降った黄巾党の者共も、励んでいるようだな」
これから向かう冀州にも、同じような境遇の者が大勢いるだろう。
戦えば当然、その中から命を落とす者が出る。
許す事の出来ぬ者は仕方あるまいが、そうでない者は何とか、更正の機会を与えてやりたいものだ。
「ところで、率いてきたのはこれだけか?」
「……? これで、全部」
「ふむ。ねね、一千ほど、と見たが相違ないか?」
「流石ですな。ちょうど、一千なのです」
霞が元々率いている兵と併せれば、妥当な線か。
いくら勅令とは言え、本拠地を空にしてまで兵を出すのは愚の骨頂。
聡明な月が、それに気づかぬ訳がない。
尤も、仮に気づかなくとも詠がいるのだ。
そのような過ちが起こりうる筈もない。
「輜重隊は?」
「途中までは同行しましたが、合流を優先させたのです。無論、必要な警護はつけてありますぞ」
「そうか」
と。
盛大に、恋の腹の虫が鳴る。
「……お腹空いた」
「そ、それは一大事なのです! 歳三殿!」
「ふふ、それでは仕方あるまい。稟、今日は此処で野営と致そう。全軍にそう伝えよ」
「はい!」
無闇な遅延は許されぬが、急ぐあまりに兵の疲労が増すようでは本末転倒。
どのみち、黄巾党はもう、袋の鼠同然なのだ。
激しい戦いにはなるだろうが、民を敵に回した反乱は、どのみち長続きはせぬもの。
……それに、恋にこの状態で行軍せよ、というのは酷であろう。
そろそろ、日も傾いてきた事だ、頃合と思えば良い。
焚き火を囲みながらの、夕餉。
荒野が多いので、薪を集めるのも一苦労だが、夜はやはり火が必須。
「ささ、焼けましたぞ、恋殿」
「ん」
甲斐甲斐しく恋の世話をするねねに、黙々と食べ続ける恋。
……そして、それを見ながら何故か惚けた表情の愛紗。
「霞。愛紗は一体どうしたのだ?」
「あー、これなぁ。恋の食べる姿見て、癒やされとるんやろ」
「確かに、何か小動物のようですが……。これがあの、呂布と同一人物とは」
「疾風ちゃん。恋ちゃんの事、ご存じなのですかー?」
「いや。ただ、丁原殿の軍に、天下無双の将がいる、とは聞いていたのだが……」
「紛れもなく同一人物ですよ、疾風。あなた程の武人なら、見てわかるのでは?」
「それはそうなのだが……」
どうも、合点がいかぬようだ。
尤も、それを言うなら私の周囲全て、合点がいかぬ事になってしまうのだが……な。
周倉や廖化、高順らのような者もいるが、主だった将は皆が女子。
才は、私が知る通りか、それに近いものがある。
それは、これまでの働きで十二分に見せて貰っている。
その事に、一切疑いを持ってはいない。
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