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剣の丘に花は咲く 
第七章 銀の降臨祭
エピローグ 重なりし運命
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。粗末で丈の短い、草色のワンピースを着ているにも関わらず、まるで妖精や天使、女神等幻想的な存在を思わせた。
 そんな美しい少女が、額に汗を流しながら、茂みを掻き分け。森の奥へと進んでいる。

「う〜ん……何処だったかしら? この辺りの筈なんだけど」

 時折立ち止まっては、少女は辺りを見回している。目的のものがないのを確認すると、またも、草を掻き分け森の奥へと進む。

「何であんなに細いのに、あれだけ食べられるのかしら? 美味しく食べてくれるから、ついつい作りすぎちゃうわたしも悪いんだけど……まさか備蓄の食料が尽きるまで食べ尽くされるなんて……」

 少女が探しているのは、食べられる果実がなる木だった。なぜ少女がそんな木を探しているのかと言うと、最近増えた家族が原因だった。彼女の小さな身体でありながら、人の二倍から三倍もの食事を取る少女の()によって、余裕を持って備蓄していた筈の食料が尽きかけたためであった。
 自分たちが消費する食料は、基本定期的に送られるものと、自分たちが育てた作物で賄っていたのだが、もはやそれも全て尽き。最後の手段と森の中から食料を確保していたのだが。自分たちが住む近くに生えている食べられるものは全て、もう採り尽くしてしまったため。少女は昔見た。たくさんの果実がなっていた大きな木の下へと向かっていた。しかし、それを見たのは、随分と昔のことであったため、そこに至る道の記憶は穴だらけであった。

「う、うう……何だか不安になってきちゃった……やっぱり付いてきてもらえば良かったかな」

 森の外では、アルビオン軍とトリステインとゲルマニアの連合軍が戦争をしているそうだ。以前みたいに、その戦争で迷い込んで来た兵士と鉢合わせになるかもしれない。
あの時は、怪我のため兵士は動けなかったから大事には至らなかったけど、もし、あの時相手が怪我してなかったら……。
自分の想像に、ブルりと身体を震わせた少女は、早く見つけて早く帰ろうと足を動かす速度を上げる。
こんな時、頼りに出来る人はいるのだが。
 食糧不足の原因の少女は、その可憐な見掛けによらず、信じられないぐらいの強さの持ち主であった。そのため、護衛として付いてきてもらえば良かったかなと思ったが、

「でも……事情を説明したら、物凄く落ち込んじゃうしな」

 それを言えば少女が物凄く落ち込むことを知っているため、結局何も言わず出てきてしまったのだった。
 足を曲げ床に直に座り込み、両手を揃え頭を下げる奇妙な格好で謝る、自分と同じ金色の髪を持つ少女の姿が頭に過る。

「確かドゲザだったかな?」

 奇妙な格好で、すみませんすみませんと必死に謝る姿を思い出し、くすくすと笑い出す。

「普段はあんなに凛々しいのに」


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