第四十七話
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精霊の森からエバンス城まで街道に沿ってひたすら走り続け、宿場の無い辺りでの野宿は体力も精神力も削り続けられた。
ようやくエバンス城の城下町に辿りついて取った宿では丸一日眠り続けるほど疲弊していた。
関係各位への書状をしたためたが、宛先が多すぎて閉口している。
まずは国元のレンスターのみんなへ、クロード神父に出した手紙内容は半分以上がレイミア宛になっていただろう、ユングヴィ姉妹にももちろんだし、士官学校関係者にも恐る恐る、クルト王太子にも書き終えて、シルヴィア宛のに取りかかりはじめた。
ずいぶん寂しくさせてはいないかと思うが、マディノでの出来ごとで知り合いがだいぶ増えただろうから案外けろっとしているかも知れないけれど。
宿屋併設の食堂の机で一生懸命手紙を書きあげていると……
「やれやれ、ようやく見つけたぞ不良王子」
そこには口角を上げてにやっと笑ったベオウルフの姿があった。
彼との思わぬ再会を喜んだが、不良呼ばわりされるようなコトは心当たりは無いのだが!
……彼はシルヴィアのたっての願いでこの街まで付き合わされていたそうだ。
彼女も他の宿屋を回っていてあとで合流するだろうとのことだ。
「どうだい? 目的は果たしたのかい?」
「ヴェルダンでのは、はい、だいたいは」
俺はクルト王太子とのやりとりを彼に伝えた。
結局ディアドラさんは一人で残ることを選び、俺は翻意を求めてみたが彼女の一言でそれ以上は言えなかった。
もし、自分が王宮に入ったらランゴバルト、あるいはレプトール卿によってクルト王太子の暗殺リスクは高まるだろうからと。
たしかに、彼を失うとグランベル王家の嫡流が途絶えるのでこの二公爵はぎりぎりで暗殺にまで及んでいないのだろう。
そんな中ディアドラさんが王宮に入ればその前提も崩れてしまう。
現実世界ならば有力諸侯が仕える王の嫡流が途絶えるのはむしろ自身の勢力伸長のチャンスではあるが、この世界に於いてナーガの使い手たるグランベル王家の者が居なくなるということは諸国へも対ロプトへも安全保障上の切り札を失うことになるので絶対に避けたい事態だからだ。
"マグニさん"としてのレプトール卿に会う機会は二度あった。 法や秩序を重んじる彼にとって不倫、そしてロプト皇族の血を引く娘がいるということは見過ごせないだろう。
後者は法を変えることでなんとかなるにしても前者はどうにもならない訳か……
まぁ、ヴィクトル公と死別して数年後にシギュンさんとの間にディアドラさんを儲けたという言い逃れをしましょうとは伝えてはあるが、うーむ……フィラート卿あたりが正直なことを述べでもするとひっくり返るしな。
この三者は、もう若くは無いし時間を味方に付ける、あるいは弱みを掴んだ
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