第七章 銀の降臨祭
第四話 貫かれる剣
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飛ぶのを目にしたが、何が起きたのか理解する前に、杖を握る腕に喪失感を感じた瞬間、視界が闇に染まった。
騎兵隊と槍隊が切り払われるのを見た弓兵隊の若い指揮官は、目の前で起きた出来事が信じられず、部下に一言も命令を発する間もなく、何かが肩に突き刺さるのを感じながら馬の上から落ちた。
何時の間にか……四万の軍勢による突撃が止まっていた。
前衛の崩壊により、アルビオン軍の進撃は止まった。
自分の元に届いた報告により、ホーキンスは前衛が崩壊したことは理解していた。
謎の敵による手により、僅かな時間で前衛が壊滅させられた。
それがメイジの精鋭部隊によるものであれば、驚きはすれ納得出来る。
それがエルフの魔法戦士によるものであれば、恐怖するが理解は出来る。
しかし、ホーキンスは知っている。
いや、ホーキンスだけではない。
このアルビオン軍を構成する四万の兵士全てが知っている
四万の軍勢を止めたものは、たった一人の男。
この世界を生み出した男。
果て無き荒野に突き立つ剣の担い手。
赤い騎士を。
前衛を壊滅させた男は、止まることなく中衛を切り裂き始めた。
このままであれば、間もなく中衛さえ切り裂き、男はここまで来るだろう。
あの男は、アルビオン軍を割るように真っ直ぐに進んでいるため、中央の損害は甚大であるが、右翼と左翼の被害は皆無であった。しかし、単騎により、前衛を突破されたという事実は、熱狂と共に進軍する軍勢の勢いする殺し。被害を受けていない筈の右翼と左翼の部隊を崩壊させた。
たった一人の男の手により二度も四万の軍の進行を止められたという現実を前に、総司令官たるホーキンスの前でありながら、兵士たちは取り乱し狼狽し右往左往していた。
一般の兵士だけでなく、指揮官たるメイジも同じく。
驚愕と悲鳴の声が微かに聞こえる中、ただ一人冷静な顔を見せるホーキンスは副官に指示する。
「……中衛はもうもたんな」
「ッ?! ……では、どういたしますか?」
「全戦力を持って奴を潰す」
声を張り上げることなく淡々と呟くように、ホーキンスは命令する。
「亜人どもの生き残りを集め、奴にぶつけろ。時間稼ぎ程度にはなるだろう。その間に、集められるだけメイジを集め、その後方に配置しろ。奴が亜人の集団から抜け出た瞬間に全力で魔法を放て」
「ハッ!」
淀みなく命令するホーキンスの姿に冷静さを取り戻した副官は、声を張り上げ敬礼する。
「まて」
命令を実行するため後ろを向いた副官を、ホーキンスの声が呼び止めた。
「竜騎士は何人残っている」
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