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剣の丘に花は咲く 
第七章 銀の降臨祭
第四話 貫かれる剣
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 ――引くは攻めずッ! 逃げるは追わずッ!――



 乾いた土が擦れる音が聞こえる。
 視界の端に、兵士たちが後ずさる姿が見えた。
 手綱を握る手に力が入り、思わず後ろに下がりそうになったホーキンスだったが、震える身体を歯を噛み締め耐える。
 逃げるわけにはいかない。
 例えこれが幻術であろうとなかろうが、ここで逃げれば、唯一の好機を逃すことになる。



 ――それでも攻めるというのならばッ!! 無限の剣からなる無限の剣戟ッ!!――



 そうだ、例えこの無限の剣が相手だろうと、使い手がいなければただの宝の持ち腐れでしかない。
 確かに男の言葉通り剣は凄いだろう。
 だが、それを振るう者がそれに見合うほどの力の持ち主とは限らない。
 戦力が分からない敵。
 ならば先程と違いはない。
 ならばッ!!



 ――恐れずにして掛かってこいッ!!!!――



 世界を震わす男の声により、アルビオン軍の意識が逃走に傾きそうになった時。
 ホーキンスの声がそれに対抗するように、アルビオン軍全軍に響き渡る。

「アルビオン軍の将兵よッ!! 恐れることはない!! 例え無限の剣が相手となろうともッ!! それを振るう者がいなければものの数ではないッ!! さあッ!! 勇敢なるアルビオン軍兵士たちよッ!! 恐ることなくッ突撃をもってここを突破せよッ!!」

 ホーキンスの声が荒野に轟き。
 逃走しかかった兵士たちの意識を呼び止める。
 ホーキンスの言葉と共に、兵士たちの身体の震えが止まり、眼に力が漲る。
 そして、

「全軍ッ!! 突撃いいいいいィィッ!!!」

 ホーキンスの号令と共に、丘の上に立つ男に向かって突撃を開始した。















 砂塵を舞い上げ、地を震わせ、雄叫びと嘶きを轟かせながら四万の軍勢が迫ってくる。
 士郎の瞳は、強化せずとも迫り来るアルビオン軍の前衛を構成する騎兵隊の闘志に燃える顔をハッキリと映していた。
 距離は既に五百メイルを切っている。
 魔法が矢が銃弾が、士郎が立つ丘の蹂躙を始めた。

「……相棒……こりゃ……」

 デルフリンガーのか細く震える声が聞こえる。

 先程の声。
 ……どうやらこのアルビオン軍を率いる指揮官は、『なかなか優秀』どころではないようだ。
 逃げ出そうとした兵士の意識を、この指揮官は見事に逆転させた。
 焦りと動揺を怒りに。
 混乱と恐怖を敵意に。
 そして、怒りと敵意を殺意に。
 しかし、これも予想の内だ。
 最悪のだが、な。

 だが、これでいい。
 今、この場にいる者たちの全ての怒りが、敵意が、殺意が俺だけに向けられている。
 ……俺一人に
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