第七章 銀の降臨祭
第四話 貫かれる剣
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ホーキンスだけではない。
副官も。
近衛隊も。
兵士も……。
その全ての思考と身体が凍りつき。
四万の軍勢が……止まった。
乾いた風が吹き。
ホーキンスの汗に濡れた身体がブルリと震えた。
始めに……炎が走った。
次に……白い閃光が視界を侵し。
視界が戻った時……そこには赤い荒野が広がっていた。
朝露に濡れた草原を、空に昇る日が照らす。
明るき陽の世界が消え……。
「ここは……何処だ……?」
目の前に広がるのは、数え切れぬ剣が突き立つ赤い荒野。
空は赤く染まり。
吹きすさぶ風は痛いほど乾き。
視界を侵す赤き荒野には果てが無い。
「幻術……か?」
連合軍には、本物と見紛うばかりの幻術の使い手がいると聞く。もしやそれかと思ったホーキンスだったが、直ぐにその考えを打ち消した。
荒野に突き立つ剣。
その一つ一つが……寒気のするほどの魔力を秘めていた。
これが幻術な筈がない。
だが、それならばこれは一体何なんだッ!?
幻術ではないと確信を抱くホーキンスだったが、まるで世界が塗り変わったかのような目の前の現実に対し明確な答えが出ず、ただただ混乱するだけ。
ホーキンスだけではない。
アルビオン軍の全てが、目の前に広がる非現実的な光景を受け止められていなかった。
一声さえ上げることが出来ず、四万の軍勢が立ち尽くす赤き荒野には、時折吹きすさぶ乾いた風の音のみが響く。
五秒……十秒……。
静まり返っていたアルビオン軍だったが、時間と共に異常な状況により積もる焦り、混乱し、恐怖が限界を越え……悲鳴じみた疑問の声が上がろうとした時、
――アルビオンの将兵よ御覧じろッ!!!――
天から声が降ってきた。
――赤き荒野に突き立ちし剣は無限――
いや、違う。
天ではない。
遥か前方、微かに見える丘の上。
そこに誰かがいる。
――ただの一振りも鈍らはなくッ!! その全てが名剣神剣魔剣聖剣宝剣なりッ!!――
この赤い世界全てに響き渡るかのような大音声による宣言は、前触れなく見知らぬ世界に放り込まれ混乱するアルビオン軍を打ちのめす。言葉の一つ一つに力が満ち。全身が細かく震えだす。
荒野に突き立つ剣は、剣の鑑定眼が特にあるわけではないホーキンスであっても、一目見て分かる程の力を感じる。
それが無限。
例えそれが嘘だとしても、果てない荒野に突き立つ剣は、百や千では足らないだろう。
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