暁 〜小説投稿サイト〜
剣の丘に花は咲く 
第七章 銀の降臨祭
第四話 貫かれる剣
[3/21]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話

 しかし、士郎の顔に諦めの色はなく。逆にその顔には、不敵な笑みが浮かんでいた。

「だが、想定内だ」
「なに?」

 最悪な状況を想定内だと言う士郎に、怪訝な様子を見せるデルフリンガー。

「どうやらアルビオン軍を指揮している者はなかなか優秀のようだな。確かにこの選択は間違いではない。動きの鈍い反乱軍を捨てての突撃。肉を切らせて骨を断つか……確かにそれは間違いではない……しかしそれは……」

 黒弓を握る手に力を込め、再度迫るアルビオン軍に向ける。
 士郎の前には、先ほどと同じように、虚空から現れた百を超える剣が突き刺さっている。

「相手が俺でなかったなら……な」















「よろしいのですか! あれ(・・)を捨ててしまって!」
「構わん! アレは動きが鈍すぎる。あれに合わせれば、また同じことの繰り返しになる。ならば、多少の犠牲は覚悟し、突撃を持ってこの場を突破する。幸いあの攻撃をする敵はそう多くはないだろう。いくら障壁が意味をなさない攻撃手段を持つものであっても、四万の突撃を止められる筈がない!」 

 馬を走らせながら、アルビオン軍の将軍たるホーキンスは、部下の質問に声を張り上げながら答える。
 全軍の指揮をするホーキンスがいるのは、アルビオン軍の最後部。目の前に広がるのは、砂埃を上げ全力を持って進撃するアルビオン軍の姿。その威容は、まさに人が創り上げた災害と言えた。
 これを止めれる者などいない。
 そう断言出来る。
 しかし、馬の背の上。
 手綱をしっかりと握り締め、全力で馬を走らせるホーキンスは、何やら言い様のない予感がゆっくりと全身を侵食してくるのを感じていた。
 何せ相手は防ぐことの出来ない攻撃により、反乱軍を指揮していたアルビオン軍の兵士を打倒したのだ。その攻撃手段どころか、相手の姿すら見つけていない。部下にはあの攻撃が出来る者は多くないと言ったが、それは推測でしかないのだ。
 だが、ぐずぐずしている暇などない。
 謎の攻撃により、既に予定の進行速度は大幅に遅れている。あのままでは、確実に連合軍に逃げられてしまっていた。ならば、これ以上時間を無駄にすることなど出来はしない。
 そうだ。
 どんな敵だとしても。
 四万の軍勢の突撃を止めることなど出来はしない。
 例え先程のように指揮官を狙われたとしても、既に動き出した軍勢を止めることなど出来ん……!!

 湧き上がる不安を押し殺すように、ホーキンスは心の中で自分を叱咤する。

 確かにホーキンスの考えは間違いではない。
 四万の軍勢による突撃は、もはや天災に近い。
 これを止めるには、同数以上の軍勢の力が必要だろう。
 だから、ホーキンスの選択は間違いではなかった……
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ