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剣の丘に花は咲く 
第七章 銀の降臨祭
第四話 貫かれる剣
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う有り得ない光景。
 ここに至り、アルビオン軍の士気は崩壊した。
 逃走を始める者が現れるのも時間の問題か。
 いや、見えないだけで、もう始まっているのかもしれない。
 顔を下ろし、首を巡らせるホーキンス。竜騎士の力を知っているが故、この世界よりも現実味が感じられない光景を前に、副官を含む兵士たちが竜騎士が堕ちる姿を一声も上げることなく見上げている。亜人は鏖殺され、千を超えるメイジの魔法が破られ、竜騎士が落とされた。兵士たちが、この事実を理解し、現実に戻って来た時、アルビオン軍は崩壊する。

「これは……覚悟を決めなければいけないかもしれないな」

 ホーキンスは腰から杖を引き抜く。

 もはや打つ手はない。
 士気は崩壊し、恐怖と混乱に染め上げられた兵士たちは逃走を始めるだろう。
 それを止める手立てはなどない。

 いや、それよりも早く。

「……来たか」

 あの男により、崩壊させられるのが先だろうか。

「……貴様が総司令官か」
「だとすればどうする」

 震えそうになる声を必死に抑え込み、強ばる顔を無理矢理笑みに変える。視線の先には、赤い騎士の姿。
 ホーキンスにとって。いや、今ではもうアルビオン軍全員にとって化物にしか思えない男だが、やはり信じられないことに、血の通った人間であったらしい。身に纏う赤い外套よりも赤い血で、全身を濡らしている。男が歩く度に、湿った音が響き、乾いた荒野に赤い血に染み渡る。
 この出血量からして相当な苦痛があるはずだろう。しかし、男の顔は苦痛に歪むことなく、ホーキンスを睨み付けている。
 男が腰から剣を引き抜いた。

「斬る」
「ァアアアアアアアアアアッ!!!」

 恐怖混じりの雄叫びと共に、護衛の騎士たちがマジック・ミサイルを飛ばした。
 赤い騎士を取り囲むように位置していた護衛の騎士から放たれる魔法。炎弾、氷の矢、石礫、四方から迫る様々な魔法の数は軽く二十は超える。それを目にしたホーキンスが、殺れると確信した瞬間。

 赤い騎士が右手に握る剣を振るった。

 ホーキンスはその瞬間、士郎の身体が三重にも四重にも見えた。身体がぶれると言う有り得ない現象を前に、目を見開くホーキンスの見開いた目に、襲い来る魔法の群れを、一つも受けることなく全て切り捨てた士郎の姿が映る。
 歴戦の騎士たる護衛の騎士たちでさえ、信じられない光景を前に、思わず追撃の手を止めてしまっていた。そして、そんな隙を見逃す士郎ではない。
 右手に持つデルフリンガーを地面に突き立て、両腕を交差させた。握られた拳の指の隙間には、黒鍵が挟まれている。士郎が身体を微かに丸めると、背中からミシリと肉が締まる音が聞こえた。

「ハッ!!」

 破裂音のような掛け声と共に、士郎が弾けるよ
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