第七章 銀の降臨祭
第四話 貫かれる剣
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走る。
ギリッと歯を鳴らし痛みに耐え、それを肩越しに構える。
脳裏を過る巨大な影。
ギリシャ神話の大英雄。
かの英雄が振るいし九つ首の水蛇ヒュドラを殲滅した宝具を模した武技。
かの英雄に手が届くはずもなく。
真似て振るう技は、模倣と言うよりもただの物真似。
しかし、それでは足りない。
迫る竜騎士は遥か遠く、物真似では届かない。
経験憑依だけでは足りない。
これを振るうには、この身体では脆すぎる。
あの鋼の如き肉体をも投影しなければならない。
大英雄そのものをこの身に|投影(憑依)させる。
それには投影では届かない。
才なきこの身では、百年の修練を持ってしても決して届かぬ高み。
ならば相応の代価を持ってその頂きに指を掛ける。
「――――投影、装填――――ッ!!」
ギチリと肉が裂ける音が響く。噛み砕かんばかりに歯を噛み締め。
肩に担いだ剣を振るう。
「是、射殺す百頭ッ!!」
刹那。
ひび割れた大地を切り裂き九つの光りが空を駆け抜けた。
「……信じられん」
呆然と呟くホーキンスの目の前で、竜騎士が空から降ってくる。
九つの光りが空を走ったかと思った瞬間。六十八騎の竜騎士を九つの光りが切り裂いた。
逃げる暇なく光に貫かれた竜騎士が、火薬が詰め込まれた樽と共に地に落ちる。
アルビオン軍の端に墜落した瞬間、鈍い爆音が響く。
衝撃にビリビリと身体が揺れるのを感じながら、ホーキンスは血が滲むほど唇を噛み締める。
用心に用心を重ねた。
有り得ないと考えながらも、あの魔法の雨さえ潜り抜けられた時のため、竜騎士に持たせた爆薬を持って、配置したメイジの部隊ごと吹き飛ばそうとしたそれが、まさか破られようとは。味方を犠牲にする作戦など、死んでもせんと誓っていたが。そうも言っていられなかった。軍全体で言えば、損害自体はそこまで酷くはない。奴は変わらず真っ直ぐに進んでくるため、被害自体は千を超えるか超えないかくらいだろう。一人の手によってもたらされた被害だと考えれば、途方もない被害であるが。七万、いや、四万の軍勢から見てみれば、四十分の一の被害でしかない。
しかし、それをやったものがたった一人だと言うのが問題だ。
未知の魔法。
圧倒的な力を持つ武器。
極限まで研ぎ澄まされた武技の数々。
そして、たった一人の手により、七万の軍が止められ、更には押し返されるというこの事実。
更にはダメ押しとばかりに、アルビオン軍が誇る竜騎士を、地上から撃ち落とすとい
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