第七章 銀の降臨祭
第四話 貫かれる剣
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跳躍ではなく飛翔。
翼あるもののみが辿り着ける筈の遥か高みに辿りついた士郎は、右手に掴む槍を手放す。
槍は地に向かって落ち始める。
その柄に、士郎の足が掛かる。
それはまるで、弓の弦に矢を掛けるかのようで。
士郎の身体が文字通り弓なりにしなる。
そして、ギリギリと弦が引き絞られる音さえ聞こえそう程、限界まで逸らした身体を、
「突き穿つ死翔の槍ッッ!!!」
解き放つ。
解き放たれた槍は紅き閃光となり、突撃する亜人の集団に突き刺さり。
瞬間。
轟音と共に紅い華が花開く。
華は異様なまでに赤く朱く紅く。
花びらの如く空から降ってくるそれは、赤く朱く紅く……吐き気をもよおすほどに緋い……。
びちゃびちゃと、濡れた音とともに大地に降り注ぐ紅いそれが、枯れた地を潤す音を背に、士郎は大地に降り立つ。
膝を曲げ衝撃を逃した姿のまま、大地に踞る士郎が顔を上げる。
「相棒ッ!!」
悲鳴のようなデルフリンガーの警告の声が響く。
顔を上げた士郎の眼前に、万色の輝きが迫る。
巨大な紅い炎弾が飛ぶ。
鋭い青い水の槍が空を切り裂く。
硬い岩弾が抉り飛ぶ。
不可視の鋭き風が無音で迫る。
空を覆う万色の光りに隙間なく。
避けることなど不可能。
士郎は大地に膝をついた姿勢のまま、左手で腰のデルフリンガーを引き抜く。
「無理だッ?!」
悲鳴じみた声を上げるデルフリンガーを無視し、空いた右手で荒野に突き立つ紅い槍を引き抜く。
紅い槍。
それは先程のゲイボルグに勝るとも劣らない槍。
名を破魔の紅薔薇。
「投影、開始」
フィオナ騎士団輝く貌の騎士ディルムッド・オディナが振るいし紅槍。
かの英雄は、二刀流ならぬ二槍流の槍使い手。
右手に赤き槍破魔の紅薔薇を、左手に黄の短槍必滅の黄薔薇を握り、戦陣を駆る騎士。
「――――憑依経験、共感終了――――ッ!!」
右手に破魔の紅薔薇を、左手にデルフリンガーを掴み、士郎は立ち上がる。
いや、駆け出す。
視界を埋め尽くす魔法の雨の中に向かって。
頼るのは両手に握る武器のみ。
槍と剣。
破魔の紅薔薇とデルフリンガー。
その二つの共通点は――。
亜人の後方に配置された、急遽集められたメイジの部隊。
突然の招集であったが、軽く千を超えるメイジが
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