第七章 銀の降臨祭
第四話 貫かれる剣
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中衛の指揮官の杖を握る腕を肩ごと切り落とした士郎は、止まることなく突き進む。立つ塞がるのならば、剣を握る歳若き少年であっても、杖を握る若き少女であっても、躊躇うことなく剣を振るう。剣が、杖が、血が、肉が空を舞う。赤い世界を更に紅く染め上げる。
そして、遂に中衛を構成する最後の部隊を切り払った士郎の前に、次に立ち塞がったものは、
――ガアアアアアアアアァァァァッ!!!――
数百に及ぶ亜人の集団。
唾液に濡れる牙をむき出しにし吠える身の丈五メイルは優に超えるオグル鬼。
同じく身の丈五メイルを超えるまるで岩の塊が動いているかの如きトロール鬼。
豚の顔と、豚の如き肥満体を揺らしながら甲高い鳴き声を張り上げるオーク鬼。
地を震わせ迫るその姿を見れば、恐怖に身動きが取れなくなるのは必定。
だがしかし、それは士郎の顔を一ミリも動かすことも出来はしなかった。
人の身体を軽く超える亜人の突撃を止めるには、さすがの士郎も己の身一つで止めることは出来はしない。避けるにしても、距離が近すぎる。しかし士郎は足を止めるどころか、更に加速する。
左手に刻まれたルーンの輝きが、一際強まる。
もはや士郎の動きを捉えられる者など誰もいない。
その姿は、まるで赤い閃光。
士郎は駆ける。
地を揺るがせ迫る亜人の集団に向け。
警告を上げるデルフリンガーの声を無視し駆け抜ける。
眼前に迫るは亜人の集団。
しかし、士郎の視線は亜人のではなく、その手前。
赤い荒野に突き立ちし数多の剣の中でも、一際異様を誇る。
それは剣に非ず。
槍であった。
果てなく広がる赤い荒野よりも更に紅い。
血で出来たのごとき紅きその身を荒野に突き立てる槍に向け、士郎は駆ける。
両手に握った黒と白の双剣を離し、士郎は紅き槍を握りしめる。
「投影、開始」
脳裏に過ぎるは、かつて見た青き残光。
早く!
速くッ!
疾くッ!!
ただ……ただ捷くッ!!!
「――――憑依経験、共感終了――――ッ!!」
まだ……。
まだ遅いッ!!
あの男は……もっと疾かったッ!!
枯れた大地を踏み砕き、砂塵が舞い上がるより先に駆け抜ける。
まだだッ!!
まだ……遅いッ!!
士郎の身体の形が歪む。
やがて左手に輝く光が全身を照らし出す。
音を越え……光の速度に指が届き。
赤い光りがそこに生まれた。
次の瞬間。
赤く輝く士郎の身体は大地を離れ、朱く染め上げられた空に向かい飛ぶ。
荒野の枯れた大地を破壊し、飛び上がる士郎。
高く高く高く……それはもはや
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