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至誠一貫
第一部
第二章 〜幽州戦記〜
二十 〜使者〜
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時期、陳留をご自身が離れる事は叶わぬ故、こうして私が遣わされた次第だ」
「では、何なりと尋ねられよ。ただ、答えられぬ事もある故、それはご容赦願うが」
「わかった。まず貴殿は、異国の出と聞くが、それは確かか?」
「事実だ。だが、烏丸や山越、匈奴、五胡などではない。蓬莱の国、と申せばおわかりか?」
「嘗て、始皇帝が徐福を遣わしたという、あの蓬莱か。だが、軍を率いるのは、才能だけでは務まらぬ筈だ。貴殿は蓬莱の国で、一軍を率いていたという事か?」
「ああ。だが、私は将軍ではない。我が国では、将軍はただ一人であったのでな」
「ふむ。そうは言っても、貴殿の戦歴を見る限り、俄には信じられぬな」
「それは、私に付き従う者が優れているだけの事。私は指示を与えたに過ぎぬ」

 嘘偽りを言ったつもりはない。
 星、愛紗、鈴々、それに疾風が加わった武官陣。
 軍師として稟と風。
 史実であれば、それぞれが曹操や劉備に仕え、後世に名を残した人物ばかり。
 多少の食い違いこそあれど、皆が優秀である事に変わりはない。

「ふふ、その指示、が重要なのだがな。それに、それだけの人物が集い、貴殿に忠節を誓う。並の人物ではあり得ぬな」
「お褒めに預かり光栄だが、多少買い被り過ぎておらぬか?」
「さて、買い被りかどうかはすぐに知れよう。底の浅い人物に、ここまでの事が成し遂げられるとは、私は思っていないが。さて、もう一つ、問いたい」
「いいだろう」
「貴殿は、何を目指しているのか。ただ単に、困っている庶人を救いたい……それだけか?」
「無論、今はそれが第一。我らは、その為に立ち上がったのだからな」
「今は、か。では、この反乱が終息した暁には?」
「先の事まではわからぬ。とにかく、日々を生き抜く事で精一杯故、な」

 夏侯淵は、無言で私を見つめる。
 私もまた、黙って見つめ返した。

「本心は明かさぬ、か。ふふ、私では貴殿の相手をするには、荷が重いようだ」
「過分な言葉だが、貴殿程の人物にそう言われる事自体、誇るべきかな?」
「……時間を取らせたな」

 そう言って、夏侯淵は席を立つ。

「もう良いのか?」
「日も傾いてきた事だ。それに、第一の目的はまだ果たせておらんからな。今日のところは、これで失礼する」
「そうか。では、また明日」
「ああ。付き合って貰った事、礼を申すぞ」

 去って行く夏侯淵の背を、四阿で見送る。

「もういいぞ、疾風」

 繁みが動き、疾風が姿を見せた。

「気づいておいででしたか」
「ああ。夏侯淵も、恐らくは、な。
「申し訳ありません。歳三殿ですから、不覚を取ることはない、と思ってはいたのですが」
「いや、いい。陰ながら万が一に備えてくれた事、感謝こそすれど責める事はない」
「歳三
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