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至誠一貫
第一部
第二章 〜幽州戦記〜
二十 〜使者〜
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無論、この場にて即答を求めるつもりはありませぬ。明日の朝、それで如何でしょうか?」
「はい。では、明朝お答え致します」
「よき返事をお待ちしております。ところで、公孫賛殿?」
「な、何だ?」

 急に話を振られたせいか、やや狼狽しているようだ。
 確かに、私と夏侯淵でのやりとりが続いてはいたのだがな。

「土方殿と、二人で少し話をさせていただけないでしょうか?」
「歳三と?」
「はい。ご心配ならば、剣はお預けしますが」
「どうする、歳三?」

 稟の推測からすると、曹操の別命を帯びての事なのだろう。
 断る事も出来るが、それでは夏侯淵の面目を潰しかねない。
 それに、何を探るつもりなのか、逆に知っておいても損はなかろう。

「拙者は構いませぬ」
「では、私は外そうか?」
「いえ。何処か、場をお借りできれば結構です」
「そうか。ならば、部屋を用意させよう」
「ありがとうございます」

 ふむ、まさしく白蓮と風の見立て通りの人物か。
 私の知識など、当てにせぬ方が良いな。



 公孫賛の兵に先導され、私達は庭へと出た。

「こちらをお使い下さい。では、御用がありましたらお呼び下さい」
「ああ。造作をかけた」

 そこは、小さな四阿(あずまや)

「ほう、なかなかに風流な(ちん)ですな」

 ふむ、どうやら日本とは呼び方を異にするようだな。

「まずは、おかけ下さい」
「はい。土方殿、一つお願いがあります」
「伺いましょう」
「もっと、ざっくばらんに話したいのですが。このように、改まった話し方ではなく、普通にしませぬか?」
「夏侯淵殿が、それで宜しければ。拙者には異存はござらぬ」

 頷く夏侯淵。

「助かる。私も、堅苦しいのは苦手でな」
「拙者、いや私もだ。夏侯淵殿、白蓮を外してまで、何の御用かな?」
「やはりか。貴殿と公孫賛殿、身分の差を感じさせない親しさがあると見たのだが、どうやら正解だったようだな」
「ほう。何故、そう思われた?」
「少なくとも、公孫賛殿は貴殿を名で呼ばれていた。それに、対等の立場で接している。これで十分と思うが?」

 なるほど、ただの猛将という訳ではなさそうだ。

「左様。私は真名を持たぬ故、名で呼んでいるが、白蓮からは真名を預かっている。信頼の証としてな」
「ますます興味深い御仁だ。ただの義勇軍とは思えぬ、我が主の見立ては誤っていなかったという事だな」
「確かに、単なる義勇軍ではない、それは否定せぬが。それでも、曹操殿程の英傑が、我が軍に興味を持つとは。それで、私という人物を確かめるように、そう貴殿に命ぜられたのだな?」
「その通りだ。華琳様は、名を上げた人物は確かめておきたい、常日頃からそう仰せでな。だがこの
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