第一部
第二章 〜幽州戦記〜
二十 〜使者〜
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手を貸さざるを得ないのが現状だ。
尤も、白蓮がそれを当然の事と思わず、感謝の意を絶やさない事が、皆の協力に結びついている、とも言える。
「詫びる必要はないぞ。曹操の使者の件であろう?」
「そうなんだ。まずは用件から伝える。黄巾党首領の張角が、冀州にいるってのは知っているよな?」
「確かに、此方の情報にはありました。ただ、本隊けあって兵数が多く、我が軍だけでは太刀打ち出来ない為、見送っていました」
「郭嘉の言う通り、その規模は十万を超えるそうだ。ただ、各地で黄巾党が撃破され、討伐に当たっていた各軍が、冀州に集まってきているらしいんだ。それで私と董卓軍、それに土方の義勇軍にも参戦要請が来たんだ」
「ほう。白蓮と月はともかく、我が軍にもか」
「ああ。使者は、歳三にも会いたいと言っていたな」
「風。使者は何と名乗っていた?」
「はいー。夏侯淵さんですね。なかなか強そうなお姉さんですよ」
夏侯淵?
確かに大物だが、使者というには些か不向きな気がするのだが。
私の知る人物とは違う、とでも言うのだろうか。
……実際、既に大きな違いは見ているから、あり得ぬ事ではないがな。
「白蓮、風。確かに夏侯淵と言えば、曹操麾下の勇将だが、何か気付いた事は?」
白蓮は少し考えてから、
「……受け答えには、澱みがなかったな。使者としての礼にも適っていたと、私は思う」
「風は、武だけじゃなく、頭も良さそうに見えましたねー。なかなか、油断の出来ない人物かと」
二人の観察眼を信じるならば、それ程の人物が、態々使者としてやって来る時点で、何かがある……そう考えるべきだろう。
「稟。どう考える?」
「はい。援軍要請だけであれば、公孫賛殿にお伝えすれば済む事ですし、そもそも、黄巾党討伐が勅令である以上、公孫賛殿を説得する必要、という前提はなくなります。となれば、目的は我が軍、そして歳三様かと」
「我が軍はまだわかるが、ご主人様、と言うのは?」
「曹操殿の性格を考えればわかりますよ、愛紗。あの方は、人物を見定めるのを好むと聞きます。ましてや、歳三様の噂です、曹操殿が耳にしていない訳がありませんよ」
私に興味を持ったか……いや、稟の言う通りだろう。
出自も定かではない私が、こうして戦果を重ねているのは、紛れもない事実。
朝廷にまで知れ渡る、とまでは望めぬが、曹操は私の知る通り、稀代の英雄らしい。
ならば、大陸の至る所に眼を向けている、そう考えるべきだろうな。
ふっ、だが少しばかり名が知れたとは言え、無位無冠の私にまで興味を持つとはな。
未だ、敵か味方かは定まっておらぬが、どちらにせよ、警戒すべき相手には違いなさそうだ。
「それで、お兄ちゃんはどうするのだ?」
「せや。夏侯淵は援軍を求め
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