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形而下の神々
過去と異世界
赤髪の銃
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 頭上の玉に弾丸が当たり、恐ろしい量の煙を上げる。

「グッ、煙幕……」

 かなりの煙が頭上を覆い、一瞬怯んだ後に目を開けるが何も見えない。
 どうやら下の玉は的が外れたらしく、不発なまま俺の足元に転がって来た。

「終わりだッ!!」

 赤髪の声と共に激しく響くけたたましい銃撃の音。しかし俺は無傷だしオルガフも動かない。弾丸は全て外したのか?いや、射撃の名手が見えないとはいえ全く動かなかった的を仕留め損なう訳がない。

 では弾丸はどこに?

「グランシェッ!?」

 俺はハッとして煙の中に叫ぶが返事はなかった。
 オルガフを使って気付いたのだが、コイツは使用者の身体は使用者が認識していない外敵からも身を守ってくれてるみたいだが、それ以外の人間を守るときは使用者自身が意識して盾の形を変えなきゃならないのだ。

「グランシェ!? おい、グランシェ!!」

「……ここだよ」

 ポンと肩を叩かれた。

「声を出すなよ?ヤツはこの硝煙の中で獲物の声を頼りに銃を当てる」

 煙幕のせいで顔もハッキリ見えないが、すぐそこに顔が有るはずなのに聞こえにくいくらいの小声。
 俺は意識しなくてもオルガフが有るから良いが素人の俺ではグランシェの援護もままならないのだろうか、グランシェは自分は自分で身を守るつもりらしい。

「すまん、グランシェ。俺ではこの神器を使いこなす事すらできん」
「気にするな、タイチは素人だしな。比べてトゥーハンドは超一流の殺人鬼だし神器も持っている。太刀打ちしろって方が野暮な話だよ」


 それからグランシェは何処かへ消えた。一流の傭兵たちがお互いに音も立てず、沈黙の中で硝煙が明けるのを待っているのだ。俺には何がどうなっているのか分からないが、それでは俺も援護は完全に出来ない。
 援護は要らないから己の身だけを守ってろってか。まぁ、俺にはそれで精一杯だけどね。

 と、その時、ヒュンヒュンと風を切る音が聞こえ微かに硝煙に動きが見えた。
 グランシェが投石紐を回しているんだ。しかしあれでは音が……。

 案の定どこからともなく銃声が響き、投石紐の音も止んだ。2人の元傭兵は一体この煙の中でなにをしてるのか。
 俺みたいな素人には何も分からないのだが、決着はつくのだろうか。

 と、その時、銃声がした方向からとてつもない熱風と爆音が体に降りかかり、硝煙が大きく揺れた。

「な、なんだぁ!?」

 ついつい叫んでしまう。と、その声を頼りにしたのか再び肩が叩かれた。

「俺だタイチ、急いで煙から出るぞ」

 グランシェは小声でそういうと、俺の背中をガッと掴み煙の外へと引っぱった。
 もう何が何だか分からないが、邪魔に成らないためにもここはされるがままでいよう。
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