ALO編
episode1 灰色で楽しい日常3
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だろうこの女性……名前は神月牡丹さん。
年は俺よりやや上といったところだろうが、やや茶色く染められた長い髪が後ろで緩く一つに結ばれており、体は凹凸のでにくい和服でありながらも十分に女性的のシルエットを描いているおかげで随分年上に見える。いかにもやり手の女将…さもなければ、メイド長だ。いついかなる時もピンと伸びた背筋は、当然今も普段通りのキレだ。
普段と違うのは、いつもは隙なく前に組まれている手に、お盆が抱えられていることくらいか。
……体を拭うのにちょうどよさそうな手ぬぐいの乗った。
「当主様の御指示で、御主人様に体を拭うものをお持ち致しました。朝食までお時間がありません。使われるのなら急がれた方がよろしいかと」
わーおやっべー、爺さんにばれてんのか。
「……分かりました、有難く使わせて頂きます。支度が出来たら向かいますので、牡丹さんは先に食堂に戻られてください。……それと、「御主人様」は勘弁してください。俺にだって名前ってもんがあるんです。あと、できれば敬語も」
「できません。当主様より、御主人様がこの屋敷にいらっしゃる間は名前で呼ぶことを一切禁じるとの指示でございます。また、私のことは名字で呼び捨てにしてくださいませ。敬語も結構です」
「……スミマセンデシタ」
一応試みた弱弱しい批判は、取りつく島なくバッサリと切られてしまった。
ちなみにこの妙なやりとりは、既にこの滞在で幾度となく繰り返されているものだ。いつかは牡丹さんが折れてくれると信じて、抵抗を続けている。残念ながら自分は、そのように呼ばれる事に快感を覚える人種では無いのだ。
とりあえずお盆の上の濡れタオル……きちんと温めて用意してくれたようで、まだ十分に心地よい暖かみを保ったそれを手に、部屋の中に入る。見れば既に布団は片づけられており、更には着替えまで置かれている。これも、全く慣れない。昔のお貴族様はこんな生活ができていたのかと驚くばかりだ。
(っと、そんなこと考えている場合じゃあないな、急がねえと!)
ゆっくりしている暇は無い。さっさと着替えないと、朝食に間に合わん。
俺が怒られる分ならまだいいが、残念ながらここではそうでは無い。
俺の為に二年…いや、十九年頑張ってくれた、母さんに迷惑がかかってしまうのだ。
◆
都内から若干離れた土地にあるこの巨大な日本屋敷の名は、「四神守」家。
読み方は、「しじんがみ」だ。
御大層な名前だが、聞いた話ではどうもそれに見合うだけの名家でもあるらしい。嘘かホントか家系はなんと飛鳥時代まで遡り、「王家(勇者だったかもしれん)の四方を守る尊い役目を仰せつかった」という伝説まである…らしい。らしい、とつくのは、
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