ALO編
episode1 灰色で楽しい日常
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、何はともあれ。
今、俺はこうして母親の実家に邪魔している。母さんも一旦仕事を休み、静養(というか、俺を養っていくために相当の無茶と心労を抱えていたのが今回の件でとうとう限界に達したのだろう)しているというわけだ。
箪笥から、きちんと折り畳まれた服を取り出して手早く着替え、上からウインドブレーカーを羽織る。外はまだ暗いし、相当に寒い。それでなくてもまだ免疫系は弱っているだろうし、体は気遣うに越したことは無い。センスの良い障子張りの襖をあけ、鴬張りの廊下をそっと歩いていく。
ここにきた最初の頃はその古来より伝わる伝統的防犯機構に屈していたが、既にここで暮らしはじめて一週間だ。どこを歩くのが一番音がしないか、既に完全に頭の中でルートは出来上がっている。「むこう」でいうところの『罠』を避けて進むのは、俺の十八番だ。
「んじゃ、今日も行きますか」
こっそりと、歩き出し、外へと向かう。
その瞬間、一瞬動きが止まって、……苦笑してしまった。
『隠蔽』、『忍び足』のスキルを発動しようとしてしまったのだ。
(……まったく、この癖は、しばらく抜けそうにないな)
今は亡きあの世界へ少しだけ思いを馳せて、俺は冬の街へと駆けて行った。
◆
さて、ゲームが終わってから精神的には生きているか死んでいるかも分からない状態の俺だったが、だからといって普段の生活を営まなくていいというわけではない。幸いなことに俺は精神的には異常者であたろうが日常生活を送れるほどには正気を保っていたので、早々に病院を出られた……というか、さっさと追い出された。まあ俺としても退屈な病院暮らしなんて早くオサラバするに越したことはないので異論はないのだが。
そしてもう一つ、こっちは残念なことに、か。
俺は日常生活を営むにあたって、そうそうシリアスでい続けられる性格では無かった。
(ま、そうでもなきゃこんなお屋敷から抜け出そうとは思わんよな……)
最近身に着けたピッキング(『鍵開け』スキルでは無い)で古い裏口の鍵を開けて、周囲の安全を確認する。時間はまだ五時三十五分だ。予想より幾分か速いが、まあ朝の散歩、そして家の堅苦しい朝食の時間が六時半というのを考えれば丁度いいか。
そう、脱走だ。
こんなご立派な家は、正直性に合わない。
ゆっくりと抜けだし、俺は軽いジョギング程度の速度で走り出した。
◆
あの世界を通じて、俺の心は若干どっかがイカレてしまったらしい。分かりやすく言えば、ブレーキが壊れてしまった、という感じか。まあそのおかげ様で俺は普通の人間であればまず不可能な速さでリハビリを終わらせ、こうして軽い運動まで出来るくらいに回復しているのだから(まあこの異常な復
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