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ソードアート・オンライン 舞えない黒蝶のバレリーナ (現在修正中)
第一部 ―愚者よ、後ろを振り返ってはならない
第1章
第1話 黒猫
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ミクチャだ。ぐるんぐるんと回って、あちこち体が振り回されて、内臓がフワリと浮かぶ。ありえない、もうやめてくれと、いたる所で悲鳴が上がった。
ちらりと幸歌の横顔を見る。彼女は全く気にしていないみたいだ。どうして、そんな風にいられるんだろう。私は今も、辺りを駈けずり回って、叫んで、地団太を踏みたい衝動を抑えているのに。
何だか悔しくなってきて、幸歌をじぃっと見詰める。とことん見詰める。テレパシーを送信し始める。気付け気付けと念じながら、眉を寄せて幸歌の頬に穴が開きそうな程見詰める。
すると、ふいに幸歌がこちらを見た。私が送信したテレパシーを受信したとでも言うのか。反射的に幸歌から視線を外す。苦笑するような気配が微かにあった。
バクバクと、心臓がうるさい。黙っていろ、幸歌に聞こえてしまう。
「あー、早く帰りたいねー」
「そうだね。寒いもん」
さっきとそう変わらない単語を言い合い、お互いの顔を見つめ合って笑う。手をこすり合わせ、一方的に体を襲う寒さに耐えた。
私は背後を振り返りため息をつく。白い息がふわっと広がって消えた。
実は、教室の建物の玄関先からは一歩も動いてはいなかったりする。
電車に乗ってこの教室に通っている人もいるくらいに、各所から集まっているのだけれど、幸歌とは偶然にも帰る方向が全く同じだ。……そして、その“偶然”に当てはまる人がもう一人いるのだ。
すると、バタバタと五月蠅い足音が近づいてくる。幸歌と同時に振り返った。一つの人影が、私たちに突進してくる。
「――――遅れてごめんっ」
「遅いよ、伸一!」
開口一番、謝罪の言葉を口にしながら駆けてきた私と同じ歳の男の子――――長田伸一に言った。
彼はゲーム好きという一面を持ちながらもバレエ部門に通う、ちょっと変わった子だ。しかも、学校では同じクラス。
本当に、偶然って恐ろしい。
「だから、ごめんってば。紅葉ちゃんに頼まれてたやつ、ラフ画までだけど描いたんだよ」
「……もう! 明日学校でいいよって言ったじゃん!」
「……ラフ画?」
すると、それまでの会話を聞いていた幸歌が、首を傾げながら聞いてきた。寒いので、歩きながら説明を入れる。
「うん。……私、ちょっと前に、絵画コンクールで入賞したでしょ?」
「あーあの、全国のやつ?たしか、最優秀賞取ったよね」
「……ま、まぁ、それは置いておいて……。――――それでね、なんかその時の絵が目に留まったとかで、茅場晶彦……って言ったかな。その人が、今構想を練っているゲームに出すモンスターのデザイン案を30体くれないかって」
「さ、30!?……あ、それで長田君に頼んだんだ。ゲーム好きだもんね」
「う、うん」
私と幸歌の会話に自分の名前が出てきた所為か、伸一は少しどぎまぎしつつも相槌を入れた。
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