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ソードアート・オンライン 舞えない黒蝶のバレリーナ (現在修正中)
第一部 ―愚者よ、後ろを振り返ってはならない
第1章
第1話 黒猫
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しい微笑みを湛えたまま、ひどく残酷で決定的な一言を私に突き付ける。
「引っ越すの、私。もうこの教室には通えないような、遠いところへ」
 深く太いため息が意図せずとも口からこぼれた。目を固くつぶり、手の平に爪が刺さるくらい両手を握りしめる。
「……どうして、もっと早く言ってくれなかったの? 急に決まったことではないんでしょ」
 ……私に言う時間なら、たっぷりあったはずなのに。
 さっき温まったはずの体が急速に冷え込んでいく。塩を入れた氷水を頭から被ったみたいだ。さーっと、どんどん、どんどん冷えていく。痛いくらいの寒さに全身が包まれる。
「ごめんね。……でも、別に意地悪をしてたわけじゃないよ。今年が終わるまでには、ちゃんと伝えようと思ってた」
「……だけど!」
「あのね、紅葉。私だって、離れたくないよ。紅葉が大好きなんだよ」
 切なげな幸歌の表情がつらい。私は、そんな顔をさせたいわけじゃないのに。耐え切れなくなって、私は目を逸らした。
 でも、すぐさま私の頬に差し伸べられた温かい手が、それを許さない。
「……っ」
「私はずっと、紅葉の親友だよ。それは何があっても絶対変わらない。……だから、紅葉のことを遠く離れても応援するよ。ずっと、ずっと応援しているよ。あなたならきっと、素晴らしいバレリーナになれるもん」

 ――――だから、負けないで。

 そう言って、幸歌は儚く笑った。







「う〜〜〜っ。さ、寒ーいっ」
「もー、寒い寒いなんて暗示かけるから、ほんとに寒くなっちゃうんだよ」
「……わ、わかってるもん!でも、実際、さむいでしょっ」
「い、言わないでっ」

 さすが12月。まだ6時過ぎだというのに、この寒さ。加えて、あたりはもう真っ暗だ。
 1月にもなればさらに寒くなると思うと、恐ろしい。雪は降るのだろうか。
 ――――と、そんなことを思いつつ隣の幸歌を盗み見る。彼女は、マフラーに顔をうずめ、手袋をはめた手を擦っていた。

……あのあと、無理やりに話題は変えられてしまって、それ以上聞くことは出来なかった。
 言ってやりたいことは山ほどあるけれど、もう決まってしまっていることならば仕方がないのだ。私たち子どもは、大人に対してあまりに無力だから。だから、もう覆せないことにこだわるよりも、幸歌と過ごす時間一分一秒を大切にして、少しでも楽しい日々を過ごす方がいい。
 幸歌が遠くへ行ってしまう前に、何か出来ることはないのだろうか。唯一無二の親友に、何か残せるものはないのか。
 ……それに、応援すると言ってくれたのに、私は何も言葉を返せていない……。
 まだまだ長く続くと思っていた日常に急に終わりを告げられて、思考は絡んで衝突して落下して……、まるでジェットコースターに乗っているみたいにモ
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