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ソードアート・オンライン 舞えない黒蝶のバレリーナ (現在修正中)
第一部 ―愚者よ、後ろを振り返ってはならない
第1章
第1話 黒猫
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そろ芸能界からお声が掛かるんじゃないかって噂もあるし」
「まったく――――恐ろしい子ね」
「本当ねぇ。……しかも、あの子いくつ教室に通っていると思う?」
 片方の女性が立ちすくむ私をチラリと見やる。その口元が弧を描いた。
 ……ああ、近くにいるのを分かっているのに会話しているのだ。わざと聞こえるように話して、なんて嫌らしい。
「え……、バレエと演劇だけじゃないの?」
「それが違うみたいなのよね〜。絵画とか、あと弓道と剣道も他の教室で習っているみたい」
「ええー、嘘ぉー。じゃあ、いつ勉強しているの? 頭も凄く良いって噂でしょ」
「それはアレよ。“天才少女”だからねぇ」
「まさに文武両道ってことかぁ。あーあ、私も才能が欲しかったぁ」
「リノは今のままでも十分素敵だよ。“普通”が一番!」
「そうね〜!」
 きゃらきゃらと、笑い声が耳を劈く。
 私は好きでやっているのに。どうしてこんな事を言われなければいけないのだ。
 こうやって疎まれ、あるいはその逆に異常にすり寄ってくる人たちもいる。しかも厄介なことに、全員に当てはまるものは上辺だけの好意だ。
 こうやって自分のプライドが傷つけられれば、わざと聞こえるように嫌味を言うくせに、普段は優しい大人の仮面を身に着けている。いっそ女優や俳優にでもなってしまえばいいのに。きっとお似合いだ。
 そう内心毒を吐いてしまうくらい、私の周りにいる人たちはみんな、気持ちの悪い好意を顔に張り付けている。
 芸術教室の人たちだけじゃない。クラスの子も、学校の先生も、近所の人たちも。
 けれど私は、そんなものはいらない。
 私は、“普通”なのだから。
 ……“普通”、なのに。

 ――――他の同い年の子達と、何にも変わらないのに!!

 石のような足を引きずりながら歩き出した。まるで背後の笑い声に追い立てられているみたい。……私は、何も悪くはないはずなのに。
 鬱々とした気分のまま教室の扉を開けて廊下に出た。カーディガンの上から、ヒヤリとした空気が肌を刺す。なんとなく、この空間までもが自分の敵のような気がしてきた。圧倒的な破壊力を持った強烈で鋭い竜巻が、私の胸に穴を空けて行き、ぽっかりと空いたそこからドロドロと液体が漏れ出て行く。突き抜ける痛みと強い漂流感に、ぎゅっと両手を握りしめた。顔の筋肉が強張り、あまりの空虚さに足を進めることが出来ない。足が樹の幹になったみたいだ。筋肉が仕事を忘れたと言わんばかりに動かなかった。
 濁流が治まるのをただひたすらに耐えようと、私は背中を丸める。

 ――――しかしその時、打ち消すように肩に軽い衝撃があった。
「もーみじっ」
「あ……、待っていてくれたの?」
 サッと、目の前の景色が晴れた気がした。それはもう、太陽の光が差し込んできたみたいに
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