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ソードアート・オンライン 舞えない黒蝶のバレリーナ (現在修正中)
第一部 ―愚者よ、後ろを振り返ってはならない
第1章
第1話 黒猫
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―。
 ……変わらない朝だった。普通の朝だった。
 ――――確かに今朝は幸せな日常があって、兄さんは笑っていたのに。
「あっ、思い出した! エビフライだったよね、お母さん!」
「……っ」
「ねえねえ、何やってるの。もうすぐ、スグが来ちゃうよ。早く夜ご飯の支度しようよ〜」
 ……ほら、兄さん。笑って。
「発表会の話もしたいんだからさ!」
 視界が霞む。唇は震えていた。膝は今にも崩れ落ちてしまいそう。
 でも、私頑張るから。
 我慢するから……。
「……も、もうー、どうして黙ってるのー?」
 ボロボロ、ボロボロ。
 口の中に涙が入ってきちゃったよ。しょっぱいなー。
「お、おかしいよ、なんで何も言わないの……?」
 ――――本当におかしいのは。
「……ひっく、……う、なんで、なんで……」

 崩れ去った嘘に、まだ縋っている私。

「……じゃ、じゃあさ、私もう一回リビングに入って来るよ。お母さんたちが楽しそうに話しているリビングに、もう一回入ってくるからさ」
 お父さんとお母さんが映画を観ていて、その真ん中で兄さんが笑っていて。そんな明るいリビングに私が入って行く。『ただいま』、『おかえり』って言葉を交わして、戻ってきたスグと夜ご飯にするんだ。
 ――――ね、これで元通り。
 幸せな時間に戻れるよ。
「い、良い考えでしょ? そうだよね……?」
 誰も反応しなかった。お父さんも、兄さんも、茫然と私を見詰めている。お母さんといったら、口元を押さえてすすり泣いていた。……どうしてだろう?
 ――――あ、そっか。私がこんな顔をしているからだね。
 だったらこの涙を止めなくちゃ。
 でも、変だな。涙の止め方が分からないよ。
「……ぅ、……うっ」
 何故だろう。笑おうとしているのに、喉から引きつった音が漏れる。
「……にいさん……、兄さん。……私は、私たちは……」
 私は笑う。精一杯笑う。

「私たちは、仲の良い兄妹だよね?」

 兄さんが喉を詰まらせる音が、シンと静まり返るリビングの中でいやに大きく聞こえた。私は何とか気力を振り絞って、血の気が引いた顔で目だけをこちらに寄越す兄さんを見詰める。その噛み締められた唇は細かく震え、何かをためらっているように見えた。
「……にい、さん?」
 どくん、と心臓がいやに大きく打った。兄さんが、口を開く。
「なあ……」
そして――――、



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「モミ……、――――紅葉」


 『ごめん』、そう声にはならない言葉の後、そっと、けれども冷酷に、――――目がそらされた。


 ――――目ガ、ソラサレタ。


 ガラガラと壊れていく音が、明瞭に聞こえた気がした。



「――――……あ、……あぁ
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