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ソードアート・オンライン 舞えない黒蝶のバレリーナ (現在修正中)
第一部 ―愚者よ、後ろを振り返ってはならない
第1章
第1話 黒猫
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に告げられていく。世界を遮断してしまいたい。

「直葉と紅葉は、あなたの従妹よ。……和人」

 イトコ。
 それはつまり、私たちは――――。

 ……ああ、“兄さん”って誰なんだろう。

 ぐわんぐわんと頭の中が揺れていて、もう、何が正しいかわからない。
 ――――私の中で、何かが壊れた。
 そう、直感的に認識した。
 目の前が真っ暗になる。視界ごとグラリと揺れ、次の瞬間には膝に痛みが走った。
「……ぁ」
 やけにかすれた声。
 それが自分のものだと認識するのに、時間がかかった。私が3人の前に転がり出てしまったという事実に気が付くのにも。
 私はチカチカと光って眩みそうになる視界の中で、何とか力の抜けた足を引きずった。見上げた先で “兄さん”の瞳を捕える。
「……にい、さ……」
「……ッ」
「ねえ、にいさん……?」
 否定してほしい、という消え入りそうな希望を抱きながら覗いた2つの光は異常に暗く、『これが現実だ』と、言葉はないのにもかかわらず言われているようで。
「にいさん……、兄さん、お願い……ッ」
 嘘だよ、って言って。兄さんが言うなら、信じられるから。明日には綺麗に忘れてしまうから!!
 私はふらつく両足を手近な椅子の背を持つことで支え、立ち上がる。痛ましそうに顔を歪める両親と、振り返った体勢のまま目を見開いて顔を青ざめさせる兄さん。
 ……認めたくない。こんなの、認めたくない!!
「――――ね、兄さん。今日ね、来年の発表会の役が発表されたんだよ」
 ……笑って。
「ほらっ、兄さんも毎年楽しみにしてくれてるでしょ? 発表会が終わるたびに、“早くモミのバレエが観たいな”なんて言ってさ……」
 それで私は決まって、“兄さんは気が早いんだから”って返すんだ。
「また、観に来てくれるよね? いつもそうだもんね?」
 ねえ、笑ってよ。
 いつもみたいに、笑ってよ!!
「…………にいさ……、どうして……」
 どうして、笑って『発表会が楽しみだな』って言ってくれないの?
「……う、ぅ……っ」
 いつの間にか、双眼からボロボロと涙がこぼれていた。止まらない。けれど、拭おうとは思えなかった。
 私は滲む視界の端に居るお母さんに顔を向け、
「……ね、ねえ、お母さん。今日の夜ご飯は何だっけ」
「も、紅葉……」
「あ、あれー? 朝確かに聞いたはずなんだけどな、忘れちゃった」
 今日の朝の出来事を思い出す。
 いつも通り目覚まし時計で目を覚まして、隣のベッドで寝るスグを揺り起こす。部屋を出たところで、大きな欠伸をしながら部屋から出てきた兄さんと鉢合わせして。そのまま一緒にリビングに行って、久しぶりに海外から帰ってきたお父さんと朝食を食べて。今日は休みだからと微笑むお母さんに見送られて登校する―――
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