黄巾の章
第2話 「愛紗の目が紅く光っているのだ……」
[2/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
…(ブルブル)」
想像したのだろう。
二人とも青い顔で、ブルブルと震えながら首を振る。
「そんな出来事が自分の命令で行われる。相手には家族もいる、友人もいる……幼い子供や身重の妻だっていたかもしれない。そんな人が自分の命令で死に……ある日、その家族が君を指差して言う。『アンタの命令で私の大事な人が死んだのだ』と」
俺のその言葉に、立っていられなくなったのだろう。
鳳統がフラッ、とバランスを崩して倒れかける。
「雛里ちゃん!」
「おっと」
俺はその背中を支えて、腕に抱く。
「わかるかい? そのつらさが。わかるかい? その悔しさが。それが指揮をする、ということなんだ」
俺はさらに話を続ける。
ひどいことを言っている、そう思うが……これが真実だ。
「君たちは、軍師として義勇軍に参加しようとしたのだろう?」
「……はい」
「自分達の知識ならば、義勇軍を導ける、そう思った?」
「……はい」
やっぱりそうか……なら言わなきゃならんな。
「今のうちに言っておこう……戦場を舐めるなよっ、小娘どもっ!」
「「!!」」
俺の言葉に――二人が固まった。
「戦うということ……死ぬということは格好良いことなんかじゃあない! 人を傷つけ、傷つけられて、次の瞬間には意思も、志も、なにもかもが塵芥に変わる……それが戦場だ!」
「「…………」」
「戦って意思を示す? そんなものは権力者側の言い分だ! 兵士は、民は、命を代償に、その権力者側の言い分を認めさせられる駒になる……それを行おうとしていたのがお前達だ!」
「わ、わたっ」
「……ひっく」
「権力者は等しく加害者だ。そして悪しき存在だ! その真理をわからず漫然と人を導く? 笑わせるな! 知識なんか、書さえあれば誰でも知ることができる。自分は戦いもせず、ただ人を戦場に送る人間をなんというか知っているか? それは軍師ではない、扇動家というのだ!」
「「ゥッ……ヒック……」」
「自分が死ぬ覚悟もなく、罵倒される覚悟もない、そんな人間が戦場を語るな! 軍師など名乗るな! 語っていいのは死ぬ覚悟と、それでも生きる意思があるものだけだ! それがないなら、戦う人間全てに対する侮辱と知れ!」
「「う、あああああああああああっ!」」
二人が号泣しだす。
うん、俺、悪者です。
「……ごめんな」
そう一言だけ言って、二人を抱きしめる。
二人は俺の服――AMスーツを握り締め、大声で泣く。
信じられるか? 孔明と鳳統が、俺の胸で泣いているんだぜ?
(一刀が見たらどう言うだろうか……いじめんなよ、とか言われそうだ)
思わず苦笑して、二人をしっかり抱きしめた。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ