第72話 =現実のひと時=
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よ…」
「何か言った?」
「いや、なんでもないよ。…さ、帰ろうぜ」
「……うん。お兄ちゃん呼んでくるね……」
時間を見るとすでに2時近くなっていて今から帰れば約束の時間には十分に間に合うだろう。直葉も和人を呼びに部屋を出たがその声はいつもよりか元気がないように聞こえた。
――――――――
「…リーファ、どうしたんだ?」
家に帰って時間ほぼぴったりにログインするとすでにリーファがログインしていた。なんでアバターの残るALOで男女が同じ部屋でログアウトしたかというと別々の部屋を取る時間的余裕がなく睡魔が襲ってきたからという簡単な理由だ。
「リクヤ……君…?…キリト君…は?」
そしてゆっくりと顔を上げたリーファは、その瞳に涙を浮かべている。それは止まることはなく次第に頬を流れていった。
「キリトはまだログインしてないよ。……何か、あった?」
「……あのね…あたし、……あたし…失恋しちゃった…」
涙を流したまま見てくるその顔は笑みを浮かべているがそれも無理やりに作った笑みにしか見えず何かを我慢しようとしているのが伝わってくる。
「ご…ごめんね。会ったばかりの人にこんなこと言っちゃって…。ルール違反だよね、リアルの問題を持ち込むのは…」
「そんなことはないって。…リアルの問題を持ち込むのがルール違反なら俺とキリトはずっとルール違反してることになるよ。だからリーファも辛かったら泣いてもいいと思う」
いつかやったようにリーファの頭に手を乗せて軽くポンポンといたわる様に、撫でるように叩く。その時、この部屋に誰かがログインしたことを知らせてくれる涼やかな効果音が鳴り響いた。
「…何か、俺タイミング悪かったか?」
その声がした方向を見ると黒ずくめの妖精、キリトがすでにログインしていた。
「ううん、そんなことないよ」
「ならよかった。……リーファもこの世界だからって感情を隠す必要はないさ」
「うん、うん……ありがとう…2人とも……」
リーファはお礼をいいながらしばらくの間泣き続け、その間少しでもリーファの気持ちが落ち着くようにとずっと俺は彼女の頭に手を乗せて撫でていた。
やがて、どこかで何時かを知らせる鐘が鳴りそれを機にリーファは顔をあげこちらを見てきた。その表情は先ほどの我慢したようなものを含んだものではなくいつもの元気なもののように感じた。どうやらそういう感情は涙でしっかりと流すことが出来たらしい。
「……もう大丈夫。ありがとね、リクヤ君、キリト君」
優しいんだね、と続けざまに言われそういうことを言われなれていないキリトは顔を赤くして照れていた。さらにそれを隠すようにあさっての方向を向いて頭をかく。
「お前も赤くなってるぞ」
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