第四十六話
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「何がでしょう?」
「なにもかもお見通しかと思ったら、そうでもないようですからね。 それと、そろそろどいてはくれぬかな? いささか痛む。心配なら手でも縛ってくれても構わないよ」
「これはご無礼しました。 お命に関わると思い、つい……」
俺がどけるとクルト王子はそのまま床に座り込み、痛む場所をさすりながら顔を顰めた。
「あの子の身の証と思って、私が生まれた時に授かった守り刀を与えようとしただけなのだよ」
「そういうおつもりとはつい知らず、軽はずみな判断で申し訳ありませんでした」
床に転がっていた短刀を出来るだけ恭しく拾い上げてクルト王子に手渡し、重ねて無礼を詫びた。
「こちらのほうこそ、いきなりあなたに魔法を撃つなど無礼の極み。 場合によっては命、奪われても致し方ないところご容赦いただけたようで礼を申します」
「その事について、今はとやかく申すつもりはございません。 まずは席に戻りましょうか……ただ、杖と魔道書はお預け願います」
杖と魔道書を預かった後、机の上に両肘を乗せて手を組み、それを額に当てて考え込んだような姿の彼に問いかけた。
「して、殿下はなにゆえディアドラ様まで眠らせてしまったのでしょうか」
「……わからない、逃げてしまおうとしたのかも知れない。 いずれ迎えに来るなどと期待を持たせるようなことを書いた上でね。 いや、たまにこうして顔を見せに来ることはあっても、あの子を王宮に迎えると言うことから逃げようとしていた。 なんとも情けなく恥ずかしい。」
「……そのご選択、さぞお心を苛んだことでしょう。 殿下と取り巻く環境からすれば致し方ないところかと思います。 なれど、幸せをどぶに捨てるようにも感じますぞ」
「その口ぶりから察するに、何か代案があるようですね」
「全ての事情を知るわたしやクロード神父を亡きものにして、シギュン様のことはあくまで隠してしまったとしましょう。 そうすると、隙をついてロプト教徒がディアドラ様とアルヴィス公の身柄を狙います」
「意味がわからないのだが、いったいどういうことなのかな?」
「シギュン様はロプトの皇族、聖者マイラの血筋を伝える方だったそうで」
「ミュアハ王子、今、なんと言った……」
「彼女に残るロプトの血は強くは無いとはいえ……殿下は御存じありませんか?十二聖戦士家で傍流の聖痕を持つ同家の男女で子を為した場合、直系を現す聖痕をもった子が生まれた事例があったということを。 それはまた、ロプトにもあてはまるようです。つまり……」
「それ以上言わないで欲しい……」
頭を抱えてクルト王子は考え込み始めた。
俺はじっと彼の反応を待ち続けた。
「娘は、ディアドラはそれを?」
「……恨まれても仕方ないとは思います
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